2011 Fiscal Year Annual Research Report
鍼はプラセボか?―世界初のダブルブラインド鍼を使って鍼の臨床効果とその機序に迫る
Project/Area Number |
22390147
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
高倉 伸有 東京有明医療大学, 保健医療学部, 教授 (60563400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢嶌 裕義 東京有明医療大学, 保健医療学部, 助教 (00563412)
高山 美歩 東京有明医療大学, 保健医療学部, 助手 (20563414)
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Keywords | 鍼 / プラセボ / ダブルブラインド / RCT / 肩こり |
Research Abstract |
鍼は補完代替医療のうち最も広く知られている治療法のひとつであり、欧米医学雑誌でも、鍼治療の効果の科学的根拠を示す多数の臨床研究結果が取り上げられている。しかし、鍼師が鍼を刺入する際に生じる感覚はマスクできないと考えられてきたため、これまで鍼治療の効果は、患者のみをマスクするシングルブラインド法の臨床研究によって示されており、「鍼の効果はプラセボ効果である」という疑問を拭いきれなかった。この問題は、本研究で実施される、私たちが開発した鍼師と患者をマスクできるダブルブラインド鍼を用いた介入実験によって解決される。 本研究は、肩こりを抱える被験者に対して、異なる3種類のダブルブラインド鍼治療または鍼治療なしの4グループの鍼治療の効果と、ダブルブラインド鍼のブラインド効果について評価する、ランダム化プラセボ対照比較試験(RCT)およびクロスオーバーランダム化比較試験による肩部の筋血流測定実験(レーザー組織酸素モニターによる鍼治療前中後の血流動態の評価)を行うものである。平成23年度、RCTでは、被験者全400名のうち300名を超える実験(鍼治療)を終え、データの整理・入力作業を始めた。RCTに関しては、その実験方法に関する論文の作成も進めている。筋血流測定実験では、各被験者の頚肩部のMRI撮影によって、予め対象となる筋を特定して実験を開始し、各介入(鍼治療)によるのべ80回の実験のうち半数以上を行った。 このダブルブラインド法に基づく臨床試験によって、鍼師の挙動や熱意、患者の思い込みや期待などが鍼治療の効果に影響を与える可能性を排除することに成功すれば、鍼が皮膚に刺入されることによる特異的効果はあるのか、あるいはプラセボ効果にすぎないのかという未解決の問題にひとつの示唆を与えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、予定されていた海外の研究協力者とのディスカッションが日程の都合により実施できなかった。しかし、研究費用の一部を繰り越したことにより、RCTにおいては、予定していた被験者全400名のうち累積300名を超える実験(鍼治療)を終えてデータの整理・入力作業を始め、その実験方法に関する論文の作成が進んだ。筋血流測定実験では、各被験者の頚肩部のMRI撮影を行うことによって、肩部の対象筋の位置が特定され、精度が増した。これにより実験開始が若干遅れたが、研究費の繰り越しによって当初の予定の約3倍の回数の実験を終えることができ、実験は当初の計画以上に進んだ。 平成24年度は、RCTでは全400名の被験者のデータを取り終えた。RCTの実験手順についての論文作成・投稿は、昨年度に予定されていた海外研究協力者とのディスカッションが行われなかったこともあり遅延しているが、海外とのインターネットを介したやり取りによってなんとか論文完成にこぎつけ、海外の医学専門雑誌への投稿作業に取り掛かった。ディスカッションに充てる予定であった予算を筋血流測定実験の謝金等に振り替えて、当初計画では全80回中50回の実験を終える予定のところ、平成24年度末までに76回を終了させ、またRCTのデータの整理・入力・解析に伴うソフトや機器、人件費等に振り替えたことにより、実験処理が当初の計画以上に進行しているため、全体としては順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
海外の研究協力者と直接ディスカッションができなかった分、RCTの鍼治療は平成24年度までに全400名を終え、筋血流測定実験を前倒しで進めておき、実験評価および論文作成に十分な時間を充てられるようにする方針で行った。その結果、平成24年度の終了までに、RCTおよび筋血流測定実験そのものは、全体の99%のデータを取り終えたため、平成25年度は主にデータの処理・解析に注力する。平成25年度の後半または平成26年度前半に海外研究協力者との直接ディスカッションの機会を設け、論文作成を前倒しして進める。一方で、海外の研究協力者とのディスカッションは、メールだけでなくライブ動画を用いるなど、インターネットを利用したやり取りを工夫して取り入れて、進行が遅れないよう努める。RCTの実験手順についての論文は平成25年度初めに海外の代替医療専門雑誌に投稿し、RCTの研究成果の発表までにその裏付けを強固にしておく。
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Research Products
(1 results)