2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗リン脂質抗体症候群の発症メカニズムの分子病態論的解析
Project/Area Number |
22390198
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 隆夫 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80146795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渥美 達也 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20301905)
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Keywords | 自己抗体 / 抗リン脂質抗体 / 抗リン脂質抗体症候群 / 血栓症 / 単球 / 質量分析 / プロテオーム |
Research Abstract |
多くの血栓症患者で血栓傾向の理由は明らかでないが、最近抗リン脂質抗体症候群(APS)とよばれる自己免疫性血栓症が高頻度に存在することがわかってきた。APSにみられる自己抗体の主要な対応抗原の一つであるβ2-グリコプロテインI(β2GPI)に注目し、抗リン脂質抗体の血栓傾向との関連性を検討してきた。抗β2GPIは、向血栓細胞である単球や血管内皮細胞に結合し活性化する。その活性化経路につき、MyD88からp38MAPKリン酸化までの上下流の経路の解析を行っている。 今年度はAPOB分子と自己抗体の血栓傾向の関連性を検証した。APOBとβ2GPIの直接結合はELISAで確認できず、酸化low density lipoprotein (LDL)中に含まれるβ2GPIのLigand (=Ox-Lig1)を介し、β2GPIと酸化LDLが血清中で結合している可能性が示唆された。抗CL/β2GPI抗体の単球におけるTF発現の酸化LDLとの関与性を調べるため、マウス単球系細胞(RAW264.7)を用い、WBCAL-1抗体(モノクローナル抗CL/β2GPI抗体)及び酸化LDLの存在、非存在下でのTF mRNA発現をRealtime RT-PCRで検討した結果、酸化LDLおよびWBCAL-1抗体の存在下で非常に強いTF mRNAの発現亢進を認めた。これは、APS患者(aCL陽性)の血清IgGによる刺激でも確認された。また、このTFの発現誘導は酸化LDLの主要なレセプターであるスカベンジャー受容体(SR-A, CD36, LOX-1)の阻害抗体により有意に抑制された。以上よりβ2GPIのヒト血清中における主要な結合タンパクは酸化LDLと考えられ、酸化LDLが抗リン脂質抗体症候群における血栓形成病態に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APOB分子と自己抗体がどのように血栓傾向をひきおこしているか検証した結果、β2GPIのヒト血清中における主要な結合タンパクは酸化LDLと考えられ、酸化LDLが抗リン脂質抗体症候群における血栓形成病態に関与する可能性が示唆されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
β2GPIのヒト血清中における主要な結合タンパクは酸化LDLと考えられ、酸化LDLが抗リン脂質抗体症候群における血栓形成病態に関与する可能性が示唆された。来年度以降、この酸化LDLに関連した遺伝子異常についてさらに検討を行う予定である。
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