2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代型血管新生療法の開発を目的とした側副血行路発達メカニズムの分子病理的検討
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22390245
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮田 哲郎 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70190791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 博之 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10241994)
重松 邦広 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20215966)
岡本 宏之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60348266)
保科 克行 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90571761)
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Keywords | 側副血行路 / 血管新生療法 / ラビット虚血肢モデル / 塩基性線維芽細胞増殖因子 |
Research Abstract |
H23年度の実施目標は、ラビット慢性虚血肢モデルを用いてin vivoにおける側副血行路発達メカニズムに関して分子病理学的に検討することであった。ラビット慢性虚血肢モデルは、大腿動脈を全長にわたり切除することにより作成するが、これによって同側の尾骨大腿筋に分布している後臀動脈の末梢が側副血行路に発達する。虚血肢モデル作成後、2日目、7日目、14日目に、側副血行路の発達が見込まれる尾骨大腿筋と、その近傍に存在するが側副血行路の発達経路からは外れた内転筋を、それぞれ採取して病理組織学的に比較検討するとと、もに筋組織の抽出液における様々なタンパクの発現を調べた。その結果、まず2日目に後臀動脈周囲の尾骨大腿筋において炎症性細胞が浸潤するとともに、同部の筋抽出液においてMCP-1、bFGF、FGFレセプター1、VEGFの発現上昇を認めた。また、7日目には、抗Ki-67染色により後臀動脈壁における活発な細胞増殖が示され、14日目からは動脈径の有意な拡大が認められた。一方、内転筋では、毛細血管密度の増加を認めたものの、それ以上の有意な所見は得られなかった。これらの所見は、後臀動脈周囲に炎症性細胞の浸潤とともに発現した各種生理活性物質が、後臀動脈に複合的に作用することによりarteriogenesisを誘導し側副血行路の発達を促していることを示唆している。特に後臀動脈周囲に発現したFGFレセプター1は2日から7日目にかけ強いリン酸化が認められ、bFGFの果たす役割の重要性が示された。 以上の知見の裏づけをするため、bFGFタンパクのラビット尾骨大腿筋への選択的デリバリー実験を実施した。すでに得られた結果としては、デリバリー後28日目での虚血肢動脈圧インデックス、血流量測定、血管造影スコア評価において、コントロールと比較して有意な血流改善効果を観察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
側副血行路発達メカニズムに関する分子病理学的検討として、「研究実績の概要」に記載した項目の他にも接着分子、NOS、ERK1/2、MMPsなどの発現や活性を検討する計画を立てていたが、実際に測定を試みたものの有意な結果を得ることができなかった。測定方法や測定感度などに問題があった可能性もあるため、側副血行路発達メカニズムにおいてこれら因子の関与が少ないと結論づけるのは早計であろう。しかし、今回明らかになったエビデンスのみからでも、側副血行路発達メカニズムの概要を理解する上での重要なヒントを得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、bFGFタンパクのラビット尾骨大腿筋への選択的デリバリー実験を継続するとともに、さらに組織学的検討や分子生物学的検討を加えることにより、次世代型血管新生療法開発に向けたさらなるエビデンスを蓄積する。また、ラビットモデルにおいて自家骨髄単核細胞の尾骨大腿筋への選択的デリバリー実験も実施し、細胞治療においてもより効率性に優れたプロトコルの開発を目指す予定である。
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