2011 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄・歯根膜由来浮遊幹細胞の系統的初期化とその中枢神経性疾患への応用
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22390375
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
住田 吉慶 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50456654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 泉 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30221039)
西村 正宏 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (00294570)
各務 秀明 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (80242866)
縣 秀樹 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (20581177)
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Keywords | 幹細胞源 / リプログラム / 神経堤 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトの歯牙間葉系細胞から神経堤細胞への初期化を、様々な培養条件を中心とした簡便な方法で試みることである。さらに、得られた細胞を、神経堤細胞の分化系譜の近縁に当たる中枢神経の疾患モデルに応用することで、その可塑性を評価することが目的である。採取が容易な口腔組織から、簡便な方法で神経堤細胞に近い段階にある細胞を選択/誘導することが出来れば、その分化系譜に近い組織に対して制御性の高い再生医療を実現できる可能性がある。本年度は、昨年に引き続き、ヒト培養歯根膜由来細胞(PDLCs)を幹細胞選択的な条件として知られる低酸素条件下に晒すことで、幹細胞関連因子の発現の変動について詳細な解析を行なった。低酸素条件は、<0.1%02と<3%O_2の2条件にて行ない、さらにPDLCsから得られる浮遊細胞塊から単離した浮遊細胞(F-PDLCs)について、同様な低酸素条件にて再度浮遊培養を行ない、幹細胞因子の発現動態を解析した。その結果、低酸素条件下での培養により、sox2やoct4の一過性の遺伝子発現など、幾つかの幹細胞因子に発現変化が認められたのに加えて、神経堤細胞に関連する.p75ngfrや幹細胞の自己複製因子であるbmi1の発現上昇を認めた。これは、24時間<0.1%O_2の条件にさらされた培養PDLCsにおいてより顕著であったが、同様の条件下で浮遊培養されたF-PDLCsは、通常の酸素濃度における培養時と比較して、短期に大きな細胞塊の形成を認め、その細胞塊の内層にP75などの神経堤細胞やStro1やNestinなど幹細胞に関連する因子に陽性を示す細胞の増加を認めた。これらの結果は、PDLCsの培養において、浮遊培養に低酸素培養を組み合わせることで、細胞の初期化を誘導、もしくは幹細胞の選択的培養が可能なことを示唆している。また当該年度中には、これら低酸素条件下に晒したPDLCsやF-PDLCsの多分化能について、軟骨や脂肪、骨、そしてドーパミン産生細胞への分化誘導を始めている。現在、それらへの可塑性の高さを評価しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究のゴールは、歯牙間葉系組織由来の浮遊幹細胞をパーキンソン病モデルに移植することによって、浮遊幹細胞の可塑性とそれを用いた細胞治療の可能性を評価することにある。現在、浮遊細胞からより可塑性の高い幹細胞の誘導・抽出を試みているところであるが、今のところ、それらの効果的な培養条件の評価・解析に時間が費やされており、in vivoの実験までには到達していない。これは、この可塑性の高い幹細胞の培養条件の設定が本研究の最も重要なベースとなる部分であるので、十分に時間をかけているためである。本研究はあと2年の期間を残しているので、このin vitroの実験にある程度の目途がつけば、当初の目標に近づけるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、歯牙間葉系組織からより可塑性の高い浮遊幹細胞を誘導・抽出し、それらを効果的に培養する条件を開発することが重要である。パーキンソン病の疾患モデルの作出や細胞の線条体への移植方法は、海外の研究協力者がこの分野に詳しいため、in vivoの実験においては、共同実験を行なう予定としている。
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Research Products
(1 results)