2013 Fiscal Year Annual Research Report
南米・北パタゴニア氷原の氷河変動と環境変動の対応解析
Project/Area Number |
22401003
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Section | 海外学術 |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安仁屋 政武 筑波大学, 名誉教授 (10111361)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パタゴニア / パタゴニア氷原 / 氷河変動 |
Research Abstract |
平成25年度の現地調査は2013年12月に行った。チリのコジャイケで空撮の天気待ちを行い、最初のチャンスは12月5日に訪れたかに見えたが、飛んでみると北パタゴニア氷原は雲に覆われており空撮は実施できなかった。翌6日は曇りで、観光船でサン・ラファエル氷河へ日帰りで行き、氷河末端の写真を船から撮った。12月7日、再度空撮を試みた。しかし エクスプロラドーレス氷河は雲に覆われていて垂直写真を撮ることができなかった。 ソレール氷河では高度約2千メートルから垂直写真撮影ができたが、強風のため予定通りのコースを飛ぶことが困難で、消耗域全体をカバーする写真は撮れなかった。さらに南へ下ると天候が悪化し、南端のシュテフェン氷河付近では雲の高度が千メートル以下となり、引き返さざるを得なかった。このため氷原の西側に位置する氷河の空撮はできなかった。 12月8日~9日はエクスプロラドーレス氷河に行き、インターバルカメラのデータ回収を行い、氷河上を歩き定点からの写真撮影を行った。12月13日、町の天気は快晴であった。これに賭けて3回目の空撮を試みた。高度約1500mでエクスプロラドーレス氷河に東側からアプローチしたが、氷原の天気は悪かった。無理して雲の下、高度約1300mで可能な限り垂直写真の撮影を試みた。しかし強風の中、飛行姿勢は安定しなかったので、一部を除き立体視可能な写真は撮れなかった。グロッセ氷河の空撮後、氷原の西側に回り込もうとしたが、雲が低いため引き返した。 今回は特に天候が悪く、このように3回空撮を試みたが、エクスプロラドーレス氷河では垂直写真が撮れず(2年連続)、また氷原の西側に分布する氷河(HPN3,HPN2,HPN1,ベニート氷河、サン・キンティン氷河、サン・ラファエル氷河、グアラス氷河、レイチェル氷河)の空撮はできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の現地調査時期(12月)は異常に天候が悪く、空撮を3回試みたが、予定通りの撮影はできなかった。エクスプロラドーレス氷河には垂直写真をとるべく3回飛来したが、いずれも他が晴れていてもここだけ雲があり叶わなかった。さらに空撮予定の20の氷河のうち、氷原の西側に位置する8つの溢流氷河、レイチェル 、グアラス 、サン・ラファエル 、サン・キンティン 、ベニート 、HPN1 、HPN2 、HPN3 の空撮が悪天に阻まれてできなかった。 短期間で激しく変化するパタゴニアの氷河変動研究にとって幾つかの氷河で1年のギャップが生じることは痛手であるが、自然相手の研究なので致し方がない。空撮できなかった氷河のうち、サン・ラファエル氷河は船から末端を撮影した。これを2年前に船から撮影した写真と比べたところ、ほとんど変化していなかった。これはここ数年の空撮写真による変動傾向と一致している。レイチェル氷河とグアラス氷河もここ2~3年ほとんど変化していないので、今回も大きく変化していないと推測される。北パタゴニア氷原最大のサン・キンティン氷河は今でも激しく変化しているので、今回データが取れなかったのは残念である。ベニート氷河も同様である。HPN1氷河と HPN2氷河は最近の傾向から若干後退したかもしれない。 HPN3氷河は2年前に末端大崩壊が起き、その後の末端の動向が興味深かったので、今回データが取れなかったのは残念である。 パタゴニアの天候は全く予測がつかず、限られた現地調査日程をいつに持ってくるかが難しい。例えば、今年度の2013年12月は異常に天候が悪かったが、2012年12月は好天が続いたと聞いている。このような自然を相手にした研究で、2010年から今までに実施した4年度のうち3年度では必要なデータが取れているので、進捗は概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は北パタゴニア氷原の溢流氷河の変動を主に小型航空機による空撮で捉え、環境変動(気候変動)との関連を調べるものである。このため方法とか技術は前年度の結果に特に影響を受けることはなく基本的に変わらない。すなわち、小型機をチャーターして氷原の周回飛行を行い、氷河の末端を中心に空撮して、氷河の変化を追跡する。また、エクスプロラドーレス氷河とソレール氷河では垂直写真撮影を行い、氷河の変化を詳細に捉える。さらにエクスプロラドーレス氷河では氷河を歩き、定点写真撮影や観察などの現地調査を行う。 問題となるのは、現地調査の時期である。今まで、南半球の初夏である11月後半から12月、1月、2月、そして晩夏の3月に空撮を行ってきたが、同じ時期で好天が2年続いたことはない。日本のような長期予報もない。このようにパタゴニアの夏の天気は全く予測不可能なので時期の選択が難しい。
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