2011 Fiscal Year Annual Research Report
資源・環境の利用からみるマヤ文明の動態―カンペチェ州南部の先史学研究
Project/Area Number |
22401044
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
横山 玲子 東海大学, 文学部, 教授 (50287041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 亮三 東海大学, 観光学部, 教授 (20114655)
吉田 晃章 東海大学, 文学部, 講師 (60580842)
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Keywords | マヤ文明 / 資源・環境利用 / 文明のメカニズム / 新大陸先史学 / カンペチェ / 先古典期 / 古典期前期 / 文明学 |
Research Abstract |
本調査研究の目的は、先スペイン期の新大陸における文明の形成・発展・衰退のメカニズムを解明することにあり、究極的には「人類文明の制約と可能性」を問うことにある。平成22年度に実施した踏査の結果、カンペチェ州南部にあるシュプヒル地域付近では、メキシコ南部に見られるリオベック様式と中部に見られるチェネス様式の建築物が混在している遺跡があり、先古典期末期から古典期にかけて、南部地域から北方へ建築様式が伝播し、かつ、伝播した様式に土着の価値観が混ざって新たな様式が生まれていったように思われた。この変化が、マヤ系民族集団のどのような活動に基づいたものなのかを焦点に、カンペチェ州南部における調査を行うにあたって、シュプヒル地域に位置するベインテ・デ・ノビエンブレ村近郊にあるラモナル遺跡を、発掘を含む調査対象遺跡とすることにした。 平成23年度は、(1)資料収集および先行調査研究結果の整理を行って、本調査の学術的意義について改めて正確な位置づけを行うこと、(2)夏までに発掘調査申請書をメキシコの文化庁へ提出し、2011年11月にカンペチェで開催される中米研究者たちの研究者会議に出席して情報収集を行い、(3)2012年2月から3月にかけて、ラモナル遺跡の測量および発掘を行う予定であった。下記「11.」に記す理由から、本年度中に発掘調査を実施するための申請を先へ延ばさざるを得なくなり、2012年3月にメキシコ、カンペチェ州へ赴いて、文化庁カンペチェ支所に在籍する現地共同研究者エレーナ・カンチェ氏とともに、本年度中に氏が収集した膨大な関連文献を精査しながら、改めて発掘申請書の作成を行った。また、現地で調査に協力をあおぐ考古学者および人類学者の選定を行った。その後、カンペチェ州中部から北部、ユカタン州、キンタナ・ロー州にある諸遺跡を踏査し、中部を中心とするチェネス様式が北部地域にはどのように分布するのかを確認し、また、グアテマラ北部にあるペテン様式がこれらユカタン半島北部地域にどの程度分布するのかという調査を行った。これらの結果を踏まえて、発掘申請書を完成させ、7月ごろまでにメキシコ文化庁へ提出する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災を受けて、科学研究費補助金の交付が一部削減される可能性があるという通達があったため、メキシコ文化庁へ提出する発掘申請書に記載しなくてはならない資金等について、具体的な計画をたてることが困難となり、その後、全額が支給されることになったが、申請の時期から実際の調査開始予定時期まで、機材の搬出・搬入などを含めて十分な時間が取れなくなった。従って、予定を変更し、現地で研究協力者とともに改めて申請書を作成しなおし、同時に、調査スケジュールの立て直しを行ったため、当初の計画からは少し遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年3月に現地で改めて研究計画を立て直し、さらに新たに入手したラモナル遺跡とカンペチェ州にみられる建築様式に関する貴重な調査資料(先行研究)の内容を含めたことで、より学術的な意義が明確となった。新たな具体的調査日程と協力者も確定したため、(1)7月ごろまでに発掘申請を行い、(2)11月から12月ごろにかけて、機材の搬出と搬入を行って、2013年1月にラモナル遺跡の測量を行い、その結果をもとに2月から3月にかけて9つの試掘抗を開けて発掘調査を実施する。3月下旬までには埋め戻し作業等を終了し、採集した遺物についてはその後も引き続き整理分析を行う。 調査の成果については、2013年3月下旬に帰国した後、調査報告書の作成ならびに研究発表と論文の執筆にあたる予定である。また、今年度は、2013年1月に実際の測量と発掘調査を開始するまでの間、過去2年間にわたるカンペチェ州南部地域を中心とする踏査結果について、論文を執筆し、広く一般へ成果を報告する予定である。
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Research Products
(1 results)