2011 Fiscal Year Annual Research Report
アラブ的人間関係のグローバル展開―先発グローバリズムの研究
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22401045
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
奥野 克己 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (90250018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 正樹 成蹊大学, 文学部, 教授 (10209281)
宇野 昌樹 広島市立大学, 国際学部, 教授 (40347612)
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Keywords | アラブ / 中東研究 / ネットワーク / 移動 / グローバル / 多国籍 |
Research Abstract |
(海外調査)研究2年目の今回は<拡大調査>と位置づけられ、具体的な活動は次のとおりであった。 ◆奥野;トルコ、ギリシャにおいてコプト・キリスト教徒の労働移動(移民・出稼ぎ)について時期、職種、出身地との往来などの調査を行い、関連資料の収集をした。その情報をもとに出身地であるエジプトでは移動先との関係維持についての調査を行った。2011.08.09-2011.09.10.(33日間)。 ◆堀内;トルコ、ギリシャではアンダルシア音楽家とアラブ音楽家との関連を移動の観点から調査を行った。音楽家としての系譜、演奏活動の足跡から関連を明らかにしようとつとめた。またフランス、パリではアンダルシア音楽に関する文献収集を行った。2011.08.09.-2011.09.02.(25日間)。 ◆宇野;トルコ、ギリシャではレバノン系商人に関する活動と出身地との関係を調査した。フランスではシリア出身の移民について、レバノンではノートルダム大学「レバノン移民研究センター」で資料、文献の収集につとめた。2011.08.09.-2011.09.17.(40日間)。 上記一連の調査活動は、中東・アラブ世界に発した「先発グローバリズム」を支える人的ネットワークの現状解明をめざすものであり、次年度の<発展調査>につながるものである。中東から発するグローバル展開は、近隣に止まらず、まさにグローバル(地球規模)の広がりを見せており、これまでの基礎調査、今回の拡大調査によって、より確かな、そして有用な情報、資料を得ることができた。 (国内活動) ◆奥野;平成23年度東京外大AA研「海外学術調査フォーラム」(2011.06.25.)に参加。科研(基盤研究・海外学術調査)における研究調査活動の円滑化を図るため、各当該地域に関する情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査および資料収集を2年間すすめた結果、本計画に着手する時点で想定していた以上の「先発グローバリズム」の具体的展開が明らかになってきた。この点で、次年度および最終年度で計画している調査内容がより明確となった。その中でも解明すべき課題として出てきたのが、移動が生む新たな「民族状況」に関する問題である。それは、出身地ではアラブと自己同定することはなかった南スーダンからのオーストラリア移民の中に、移民先での新たな人間関係の中で自らを「アラブ移民」と位置付けるようになったという事例である。この展開の具体的な解明は、「先発グローバリズム」の人びとのかかわりのメカニズムを考える上で重要な示唆を与えてくれると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画の大きな目標である中東発の「先発グローバリズム」解明にむけて、これまでと同様に文化人類学的なフィールドワークの手法を使って予定通り調査をすすめてゆく。上記11に記したように、当初の計画には組み入れていなかった地域について課題と密接かつ重要と思われる事例と判断したため、調査対象の緊急的追加をおこなう予定である。具体的にはオーストラリアのアラブ移民を調査に組み入れることであり、このことによって研究目標が変じることはなく、むしろ質的な研究発展が望めると考えている。
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Research Products
(7 results)