2012 Fiscal Year Annual Research Report
生活環境から見た公共空間の社会学的考察―公園の日中比較を軸として
Project/Area Number |
22402041
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
荒川 康 大正大学, 人間学部, 准教授 (80433324)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 社会学 |
Research Abstract |
平成24年度は本調査の最終年度として、 人びとの日常生活と公園との関係を実証的に明らかにする作業に焦点を絞って調査を実施した。とりわけ、平成23年度まで調査してきた北京市内の公園については、利用者の実態を量的に把握するために、質問紙にもとづく調査を、現地で暮らす中国人調査員の協力を得て実施した。 質問紙調査によって明らかになったのは、公園の大小にかかわらず、全体として、いずれの公園においても朝早くから夜になるまで、大変多くの者(とくに50代以上の高齢女性)に利用されているということである。その背景には、年票(定年退職者が安価に購入できる年間利用パス)の存在や、公共交通機関が大変安く利用できるなど、利便性が高いこともあるが、不十分な健康保険制度や住宅事情の悪さとともに、共働き世帯が多くを占める中で高齢者が子育てを担う中国文化の存在が、高齢者を公園を向わせる側面がある。とくに女性は50歳を超えると定年に達する場合が多く、現役のうちから定年後の生活を念頭において生活することになる。そこで多くの勤労女性は、現役時代には帰宅後、体操やダンスなどのために夕方や早朝に公園に出かけ、定年後になると、孫育てや自らの「第二の人生」を謳歌するために公園に出かけるようになる。質問紙調査では、バスで片道数時間かけて公園との間を1日2往復する利用者もまれではないことが明らかになり、少なくとも多くの北京で暮らす元気な高齢女性にとって公園は、暮らしの中で不可欠な場所になっている様子が明らかになった。 以上の質問紙調査の結果等については、2012年11月3日に開催された第85回日本社会学会大会において「近代化装置としての公園とその限界」と題して口頭報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
尖閣諸島をめぐる一連の問題によって日中関係が悪化し、2012年秋から2013年1月まではインタビュー調査中の不測の事態を避けるために、中国における調査を見合わせた。しかし、2013年2月に天津、北京を駆け足で調査を実施した結果、翌年度に一部繰り越して調査を実施することで、本研究の成果をまとめることができると判断した。 そこで、2013年4月から5月にかけて、当初から予定されていた本調査を追加して実施した。これにより、調査研究の遅れをほぼ取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、2012年度までの調査結果を参照しつつ、全体のまとめのために必要な追加調査を実施する予定である。とくに公園造成のために移転を余儀なくされた北京市郊外の村の様子を追跡調査し、公園と人びとの暮らしとの関係をより多角的に考察したいと考えている。
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Research Products
(1 results)