2010 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニティー・カルテ・システムによる社会的排除の動学的研究
Project/Area Number |
22402047
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
日下部 元雄 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋研究科, 教授 (70565762)
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Keywords | 社会的排除 / 社会的包摂 / 社会関係資本 / 貧困 / 心の健康 / 子どもの貧困 / 社会疫学 |
Research Abstract |
平成22年度においては、新宿、リバプール、ロンドンの各都市において、コミュニティー・カルテ調査(以下CCS)に協力して頂ける市民団体を、各都市で5-6団体程度選定することから始まった。CCSは社会的排除を受けている人が多い地域での調査となるため、地元で信頼されている市民団体の協力が不可欠である。新宿では、電話帳による無作為・郵送調査のほか、区役所の生活福祉課、社会福祉協議会、NPO協議会、ホームレス支援団体等の協力が得られ、約200の有効回答が回収された。リバプール・ロンドンではコミュニティー・センター及び市民相談センターなどの協力が得られ、それぞれ約300の有効回答が回収できた。 質問表は、社会的排除に深く関連する、雇用・健康など8つの分野からリスク要因を計40選定し、それらの問題の有無や発生時期・終了時期を聴き、1回の調査で多次元の「回顧パネルデータ」が作成できるよう工夫をした。また同時に、社会的排除のリスクを低減する「強み要因」についても、同じく40要因を選定した。合計80の要因について日・英それぞれ同内容の質問を作成し協力団体を通じ匿名による調査を行なった。 CCSは単に調査をするだけではなく、その結果明らかになった調査参加者一人一人の問題点について、その解決のための対処プログラムの情報をウェッブ・ベースで提供し、本人がパスワードを使いアクセスし、自分のリスクを軽減し「強み」を伸ばせるようなシステムを目指している。このため、3都市での社会プログラムのコンテントつくりを地元の協力団体と提携して行なった(www.opencityportal.net)。 データの分析手法としては、社会疫学で利用されているケース・コントロール法と多変量回帰分析の2手法を用いることとした。 この結果についてリバプール市で福祉・医療関係者とセミナーを行い、CCSの有効性に関し、大きな支持が得られた。
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