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2011 Fiscal Year Annual Research Report

コミュニティ・カルテ・システムによる社会的排除の動学的研究

Research Project

Project/Area Number 22402047
Research InstitutionRitsumeikan Asia Pacific University

Principal Investigator

日下部 元雄  立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋研究科, 教授 (70565762)

Keywords社会的排除 / 社会的包摂 / 社会関係資本 / 貧困 / 心の健康 / 子どもの貧困 / 社会疫学
Research Abstract

平成23年度には、新宿区、ロンドン市、リバプール市で実施した22年度調査結果のデータ分析を行うとともに、同じ都市で2年度目の調査を行なった。社会的排除を引き起こす原因として先行研究で指摘されていた40のリスク要因と、その連鎖を防ぐとされている40の「強み要因」の内、今回の分析では幼児期・学齢期・就労期・心の健康に関するものを対象に、それらの要因間のリスクの連関を二つの社会疫学的手法(ケース・コントロール法・多変量回帰分析)を用いて分析した.この結果、(1)「少年期の貧困」「親との接触が少なかった」「仲間遊びが苦手」などの幼年期のリスク要因が、学齢期において「いじめ」「不登校」「高校中退」などリスクを一般の人に比べ2-4倍程度拡大すること、(2)幼児期・学齢期のリスク要因が「不安定・欝」「引きこもり」などの「心の健康」や就労期における「NEET」「非正規雇用」「失業」などのリスクを大幅に拡大すること、(3)それらの要因が「貧困」の重要な決定要因になることが示された。多変量回帰分析の結果、「NEET」「非正規雇用」が「貧困」のリスクを大きく高めることが示された。
一方、「強み要因」が人生の各段階で社会的排除のリスクを大幅に軽減することも示された。これらの「強み要因」のリスク低減効果は、「家族の支援」「近隣の助け合い」「育児センター」「在宅介護サービス」などの「共助」に関する強みが非常に高いリスク低減効果を持つことが示された。
23年12月には、新宿区で岩田正美・日本女子大学教授の司会によるシンポジウム「共助社会の創造を目指して」(内閣官房・自治体など約30人出席)においてこれ.らの成果の発表を行なった。その後、24年2月には、国立社会保障・人口問題研究所、内閣府社会的包摂支援室、アジア経済研究所などから招かれ、研究発表を行い、CCS調査の手法は内閣府の24年度の調査にも反映されることになった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

当初は社会的排除に関する調査を3回行いパネルデータを作成することとしていたが、岩田先生、阿部彩先生などが使っておられた人生のイベントを振り返って聞く方式を大幅に取り入れ、1回の調査で過去にさかのぼってリスク要因の推移を聴取するという手法(回顧パネルデータ)を用いたため、初年度の調査のデータからある程度のパネル分析が可能となり、有効な結論が出せることとなった。その結果、多くの研究機関や担当官庁での結果の報告が可能となった。23年度の調査は、時期について質問していなかった「強み要因」についてもそれらが起こった時期を聴き、回顧方式でパネルデータ化することなど、より精密なデータ分析ができるよう力を入れることが可能となった。

Strategy for Future Research Activity

24年度においては、まず、23年度調査で得られたデータの分析を行い、「強み要因」の時期を調べたことにより、どの程度分析の制度が向上したかについて検証する。
また、これまでの分析の結果得られた政策的インプリケーションに基づき、CCSを社会的サービスの向上にどのように結びつけるかについて更に分析を深める。これまでの分析によれば、新しいタイプの貧困を防ぐためには、(1)幼児期・学齢期からの早期のリスクの把握と早期の対処が必要、(2)問題が起きてからの対応よりも予防的な対応がはるかに有効、(3)リスク要因だけに着目するのではなく「強み要因」を伸ばす施策も有効、(4)家族内、近隣社会などのコミュニティーにおける「共助」の施策が有効という4つの政策的なインプリケーションが示された。また、英国ではそのような早期・予防的な社会サービスが主として民間の「社会企業」により供給されており、公共部門がそれを制度面から支援するシステム(「戦略的コミッショニング・システム」)が進んでいることも分かった。
24年度には、これらの計量的分析結果を踏まえ、「社会企業アプローチ」により早期・予防的対応サービスの供給を促進する方法につき、次のような調査を行っていく。(1)社会的なサービス・ニーズをCCSを使い的確に把握する、(2)そのような社会サービスを持続的なビジネスとして提供している社会企業のビジネスモデルを英国・日本での先進事例も踏まえ、収集する。24年4月には、厚生労働省社会援護局長の招きにより同省に対しCCSの調査結果を報告し、この研究成果が、同省が目指している生活保護など生活困窮者対策の改革の方向性と一致しているという結論が得られ、CCSの将来の全国的展開を念頭において24年度から滋賀県東近江市においてCCS導入のパイロット事業を行うことが決定された。これに基づき第1回目の東近江市のフィールド調査(4月)では、福祉に取り組んでいる多くの社会企業家の方たちとお会いし、障害者・高齢者・青少年教育などの面で持続可能なビジネスモデルを収集するため準備が整った。また、民間福祉関係者に対しCCSのデモンストレーションを行い「CCS導入により、問題を抱える人たちが必要なサービスにアクセスするまでの時間を大幅に短縮できる」との意見と期待が寄せられた。
また、24年度にはこれまで報告を行なっていなかったロンドン市については主研究者が客員教授を勤めるロンドン大学University College Londonと協力してセミナーを開催する。

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Published: 2013-06-26  

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