2010 Fiscal Year Annual Research Report
海外に自生する発熱植物の体温時系列データの収集と決定論的非線形予測
Project/Area Number |
22405001
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
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Keywords | 生体生命情報学 / 植物 / アルゴリズム |
Research Abstract |
一般に植物は積極的な発熱能力はなく、その体温は気温とともに変動すると考えられている。しかしながら、驚くべきことに、植物の中には能動的な発熱によりその体温を外気温より10℃~20℃以上も高く保つことができる"発熱植物"が存在する。本研究においては、Arum maculatum等の海外に自生する発熱植物を対象に、フィールドにおける体温変動に関わる時系列データを収集するとともに得られた時系列データについて、決定論的非線形予測を行い、それぞれの発熱植物が有する温度制御に関わるダイナミクスをザゼンソウと比較することを目標にしている。本年度においては、英国および豪国を訪問し、それぞれArum maculatumおよびPhilodendron selloumの自生地においてそれぞれの発熱現象をとらえることに成功した。Arum maculatumにおいては、その発熱は一過的なものであり、付属体および雄性花序において観察された。また、Philodendron selloumにおける発熱も一過的なものであったが、その発熱期間はArum maculatumに比較して長かった。さらに、得られた温度データを基に、決定論的非線形予測を実行したところ、両者は既に「Zazen attractor」で特徴付けられることが知られているザゼンソウの発熱制御システムとは異なる制御アルゴリズムを有することが判明した。これらの結果は、発熱植物の温度制御システムには多様性が存在することを示唆している。次年度以降は、それぞれの発熱植物における温度測定をより充実させるとともに、Arum maculatumについてはその一過的な温度上昇メカニズムに関する情報が得られるような調査研究を行う予定である。
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