2011 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュのダッカ近郊の淡水域における病原性腸炎ビブリオの生態学的研究
Project/Area Number |
22406003
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大友 良光 弘前大学, 大学院・保健学研究科, 准教授 (90374826)
|
Keywords | 腸炎ビブリオ / 血清型 / 食中毒 / ダッカ / バングラデシュ / 新クローン / 浮草 |
Research Abstract |
腸炎ビブリオは生息に食塩が必須である海洋性細菌とされ、これまで多くの研究者が感染源追究のために海域・汽水域で調査を実施しているが病原性菌の分離例はきわめて少ない。筆者らはバングラデシュのダッカ郊外の淡水域から多数の腸炎ビブリオを検出したことを契機に、本研究で病原性腸炎ビブリオは人口密集地帯の淡水域に多く生息している仮説を立て、ダッカ近郊の淡水河川、並びに対象地域としてエビ養殖場近郊の汽水域を3年間、毎年雨季と乾季に浮草の根、河川等の堆積泥等の菌検索を実施し、菌の生態の解明、患者発生予防、輸出エビ等への病原菌汚染防止に資することを目的として研究を行っている。平成23年度には検索菌種の幅を広げて調査した結果、(1)雨季9月に淡水域の浮草から病原性の腸炎ビブリオは検出されなかったが、当該菌と同様の場で生息しているV.alginolyticusやV.fluvialis、さらには淡水域に生息するV.mimicusや非病原コレラ菌(V.cholerae)も検出された。(2)乾季2月に淡水域の浮草と水域の底堆積物から非病原性腸炎ビブリオ以外に淡水性および汽水・海洋性のビブリオが検出された。(2)対照地域の汽水域から多くの血清型の腸炎ビブリオが分離され、エビの養殖田からtrh1陽性菌株が分離された。以上のように、TDH産生菌分離されていないが、雨季の洪水時期に内陸部の淡水域で腸炎ビブリオとコレラ菌などが混在生息する事実は新たな知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸炎ビブリオは海洋性細菌とされ河口等の汽水域が主な生息環境とされていたが、当初の予定どおりダッカ等の都市部の人口密集地帯の淡水域でも生息していることが明らかとなった。また、一部の分離菌は病原性を有していることが判明したが、耐熱性溶血毒(TDH)産生菌株はまだ分離されておらず、感染者が少ない可能性も考えられる。さらには、淡水域では好塩性の腸炎ビブリオ以外の海洋性ビブリオや淡水に生息するコレラ菌なども同時に検出される新たな知見も観察されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に問題点は生じていないのでこのまま続行したい。また、今後の発展的なテーマとして、(1)淡水域に腸炎ビブリオが生息するための条件として高タンパク質環境や塩化ナトリウム以外の一定濃度の無機塩環境などの関与も解明する必要がある、(2)日本を含め、他の東南アジア各国の淡水域での腸炎ビブリオの生息状況についての調査も必要である、(3)腸炎ビブリオとコレラ菌等の混在する環境が新型クローンの出現に関与しているようにも思われるため、その環境が新たな病原性腸炎ビブリオの振興に寄与している可能性について解明する必要があると考えている。
|
Research Products
(1 results)