2011 Fiscal Year Annual Research Report
難治性腎疾患克服を目指す小児腎糸球体硬化症のアジア国際共同調査
Project/Area Number |
22406027
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
塚口 裕康 関西医科大学, 医学部, 助教 (60335792)
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Keywords | 間質性腎炎 / 尿細管障害 / 疾患遺伝子 / 連鎖解析 / ゲノム |
Research Abstract |
[背景]髄質嚢胞形成と高尿酸血症を特徴とする家族性間質性腎炎の一病型として、若年性高尿酸血症腎症/髄質性嚢胞腎複合体(Familial Juvenile Hyperuricemic Nephropathy(FJHN)/Medullary Cystic Kidney Disease(MCKD)complex)と呼ばれる疾患範疇がある。FJHN/MCKDの30-40%はUromodulin変異が原因であるが、残り60-70%の症例の疾患遺伝子は未だ不明である。 [目的]申請研究では、優性遺伝様式を示すFJHN/MCKD家系(Uromodulin変異はないことを確認済み)の疾患遺伝子を明らかにする。さらに本症例から得られる尿細管間質性障害の分子機序を基に、新しい診断・治療法開発のための基盤を構築する。 成果 申請者らは、先行研究でFJHN/MCKDの大家系(Zhang H, Am J Kidney Dis 1999)の患者9名と健常者17名について全ゲノムSNP連鎖解析を行い、2か所にロッド値ピークを得た(新潟大学・成田一衛教授、ゲノム支援班との共同研究)。本年度は、この2領域内の疾患変異を探査し、その意義の検証を行った。 (1)全エクソーム解析:家系内の8名(患者4、健常4)について、Sure Select Kit(50Mb)で全エクソームライブラリーを作成した。次世代シークエンサーHiseq2000を用いて、paired-end 75bp,Depth x30-50,total 6 Gbの条件で変異を検索した。その結果、2つの遺伝子に疾患とcosegregateする一塩基置換を検出した。 (2)候補遺伝子の意義付け:FJHN/MCKDの9家系の検体を新たに収集し、上記の2遺伝子の一塩基置換の有無をサンガー法シークエンスで確認中である(東京薬科大学・市田公美教授との共同研究)。また2遺伝子のヒト腎での局在を、免疫組織染色法で検討した。 [意義・重要性]昨今全世界的に腎不全に進行する疾患予備軍を慢性腎臓病(CKD)という新しい包括的概念で取りまとめ、早期からの治療対策が推進されている。本研究でCKDの主因の一つである腎尿細管間質障害の疾患因子を明らにし、治療薬開発や予防方策の充実化に貢献したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全エクソーム解析(50Mb)を共同研究により導入し、原因変異のスクリーニングを大幅に効率化できた。また先行研究で家系の連鎖解析を行い、ゲノム内での疾患遺伝子の存在部位のマッピングはできている。現在これまでの情報(患者表現型、マッピング、エクソーム解析)を統合し、最終的に有力な候補遺伝子を2つに絞り込み、発症における意義を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
患者の全エクソン解析を終了し、得られた2遺伝子の意義のついて検討を行っている。今回の条件の解析で患者群に検出された2つの1塩基置換は、いずれもアレル頻度が1%前後であった。家系内でこれらの1塩基置換は、ほぼ完全に疾患とcosegregateしている。しかし(1)家系特異的な良性多型で単なるSurrogate markerとして振る舞っているのか?(=真の疾患変異は近傍にある)、あるいは(2)それ自身が疾患リスク因子として作用するのか?、の鑑別が重要となる。現在、これらの2つの1塩基置換の意義を検証するために、(1)新たな家族性間質性腎炎の9症例について変異の有無を探索し、(2)遺伝子の腎尿細管での局在・分布、尿中細胞での発現、Uromodulinとの蛋白相互作用の有無についても確認中である。
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