Research Abstract |
本研究は,携帯デバイスを対象としたマルチセンソリー認証方式の開発を目的としている.現在,携帯デバイスでの認証にはパスワードなどが多用されているが,覗き見への耐性の面で問題がある.本研究では,画像などの視覚情報,音声などの音響情報,振動などの触覚情報といった複数の知覚要素を組み合わせて認証に利用することで,覗き見への耐性が高くかつユーザが使いやすい認証方式の開発を行っている.また,携帯端末を振る動作などの行動的特徴を認証に利用する方式の検討も行っている. 本年度は,まず,ウェーブレット変換を利用して重畳した画像をグラフィカルパスワードに使用した場合の,認証成功率,及び,第三者による覗き見に対する耐性の評価実験を行った.本重畳方式では,ユーザの鍵となる画像の高周波成分を,窃用を困難にするための囮画像の低周波成分に重ね合せて合成する.実験の結果,画像の組合せによっては,鍵画像の一部が視認しづらい場合があることが明らかになった.そこで,画像の組合せの適合度を評価するための尺度の構築と,画像重畳法の改良を行った.次に,携帯端末上で動作するマルチセンソリー認証ソフトウェアのプロトタイプを開発し,ユーザテスト環境の整備を行った.画像情報として数字,動物のアイコン,色,音の長短や高低を表すアイコンを用意し,音響情報として各画像情報を想起可能な効果音やナレーションを用意した.予備ユーザテストの結果,動物のアイコンを用いた方式が最も使い易いという評価が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究の最終年度となる.そこで,今後は,これまでの成果をもとに,認証方式の改良を進めるとともに,より詳細なユーザテストを通じて,提案する認証インターフェースの使い易さの主観的評価を行う予定である. なお,これまで,主に視覚と聴覚とを組合せたシステムの検討を行ってきたが,振動などに対する触覚やユーザの空中筆記動作など,新たなモダリティを取り入れた方式の可能性についても検討し,今後,ユーザブルセキュリティに関する新しいテーマを発掘し,新たな研究として発展させていく予定である.
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