2011 Fiscal Year Annual Research Report
肺静脈心筋細胞の自動能発現に関する電気生理学的研究
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22500363
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
尾野 恭一 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70185635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 貴喜 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (80431625)
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Keywords | 肺静脈 / 心房細動 / ノルエピネフリン / 一過性内向き電流 / イノシトール3リン酸 / Na-Ca交換 / 自動能 / 不整脈 |
Research Abstract |
臨床上最も頻度の高い不整脈である心房細動は、その起源が主に肺静脈であることが知られている。また、肺静脈には組織学的に自律神経が豊富に分布しており、心房細動と自律神経の関わりが盛んに論じられている。本研究では、ラット肺静脈より単離した心筋細胞を用いノルエピネフリン(NE)による自動能を解析・検討した。ラット肺静脈心筋細胞はノエルエピネフリンにより4-5Hzの自発性活動電位を生じた。NE誘発自動能は肺静脈心筋に特異的で、心房筋細胞では認められなかった。自動能の出現前後で膜抵抗に変化を認めず、電圧固定条件では固定電圧によらず内向きの振動性電流が認められた。選択的NCX阻害薬により、この誘発自動能は停止したことから、Na-Caexchanger(NCX)がこの自動能の主な責任担体であると考えられた。細胞内カルシウムイメージングと電気生理の同時記録では、NE誘発自動能はカルシウム・貯蔵部位からのカルシウム放出に伴って起きていることが確認された。自動能はアドレナリン受容体α1遮断薬、β1遮断薬により停止した。α1受容体のシグナル伝達経路に着目し、伝達経路の下流の拮抗薬を投与したところ、イノシトール3リン酸受容体(InsP3R)の拮抗薬がこの自動能を阻害した。 電子顕微鏡による観察では、肺静脈心筋細胞は心房筋細胞に比べて大型で筋線維に富んでおり、T管が発達していた。また心房筋細胞に特徴的な心房穎粒をほとんど有さないことから心房筋細胞とは異なる発生起源を有することが示唆された。NCXとInsP3Rについての免疫細胞化学では、両者がT管に沿って共局在していることがわかった。以上より、肺静脈心筋においてlnsP3RとNCXが共役して催不整脈性の自動能を惹起する事が示唆された。これらの実験結果はJournalofMolecularandCellularCardiology誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ノルアドレナリンによって自動能が出現する仕組みを細胞レベルで明らかにすることである。研究開始後約2年で、自動能の発生機序について電気生理学的および免疫組織化学的実験を積み重ね、論文発表にまで至っており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
大きく2つの方向性を考えている。第一に、これまでの研究で新たに肺静脈心筋細胞には過分極によって活性化されるC1電流が存在することが明らかとなった。その電気生理学的特徴から自動能への関与が考えられる。すでに具体的実験に着手しており、今年度は本電流系について系統的な解析をおこなう。第二に、肺静脈心筋細胞の興奮性をコンピュータシミュレーションすることである。すでに電気生理学的データがほぼそろっており、今年度中にプログラミングを開始する。
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Research Products
(7 results)