2010 Fiscal Year Annual Research Report
随意動作における素早い筋出力の調節に関わる中枢制御機構
Project/Area Number |
22500577
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
藤原 素子 奈良女子大学, 文学部, 教授 (30220198)
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Keywords | バイオメカニクス / 筋出力 / 随意動作 |
Research Abstract |
ヒトの随意動作遂行時の素早い筋出力の調節に関わる中枢制御機構について、筋活動を指標として実験を行った。特に素早い出力の減少に着目し、素早い出力増加と比較検討した。女子大学生13名を被験者とし、座位で右腕の等尺性肘関節屈曲(90゜)動作における張力発揮を行った。被験者の課題は最大張力(WF)の40%の力を保持した状態から、視覚刺激に対してできるだけ早く2種類の要求水準(20%MVFあるいは60%MVF)に到達することであり、予め要求水準がわかっている単純反応課題とわからない選択反応課題を行った。測定項目は発揮張力と筋電図で、張力より正確性および反応時間(調節開始時間、調節時間、両者を合わせた全体調節時間)を求めた。また、調節時間における張力速度を算出した。筋電図については、FFTにより各試行における視覚刺激呈示後1000ms間の中間周波数を求めた。 結果、正確性において、20%MVFと60%MVFの恒常誤差は課題間で差がみられなかったが、発揮された張力は20%MVFでは要求水準より小さく、一方60%MVFでは大きかった。反応時間では、要求水準による違いはみられなかったが、全体調節時間で選択課題のほうが長く、この差は調節開始時間の差によるものであることが示唆された。また、調節時間における張力速度の絶対値では、60%MVFにおいてより大きな最大速度とより短い最大速度到達時間を示した。筋電図周波数帯域は約20~120Hzに分布しており、中間周波数には課題間の違いはみられなかったが、要求水準では60%MVFのほうが高かった。 以上の結果から、素早い筋出力調節における出力促進と抑制メカニズムにおいて、中枢における調節開始に関わる時間的要素は変わらないが、調節期間においては動員される運動単位の違いが最大速度およびそれに到達する時間として現れる制御様式の違いとして反映されることが明らかとなった。実際のスポーツ場面では、両側の体肢における筋出力の増減の調節を行っているが、本研究結果はその複雑な制御機構について基礎データを提供した点で有益であるといえる。
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