Research Abstract |
本研究は,打具を使用したボールの打撃パフォーマンスの向上を目標とした知覚トレーニングの開発を目的としている.トレーニングの対象が,物体運動の認知能力や,身体運動の制御能力では無く,事前調査により分かっている,状況により変化する予測エラーのコントロール能力であるところが,今までの研究と大きく異なっている.そのために,まず,トレーニング開発の手段として,予測エラーの特性を明らかにする必要がある.本研究では,その方法として,等速で運動している物体を途中で遮蔽し,その後の物体の運動予測をさせる方法をとっている.平成22年度は,以下の2点について検討し,ECVP2010およびVR学会第15回大会に学会発表,およびVR学会論文誌へ投稿・受理された.1点目は,運動物体への注意配分を操作し,遮蔽後物体の運動予測に与える影響を検討した.結果,遮蔽後の運動物体への注意配分を低減した条件のみ,移動距離を大幅に短く見越す結果が得られた.このことから,運動物体の予測エラーの変化に,注意配分が影響していることが示唆された.物体の運動予測は,移動距離予測,移動速度予測,移動時間予測などの要素に細分化出来る.それぞれの要素は,完全に独立しているとは考えにくく,相互作用があるといえる.今までの実験条件では,一定時間後の移動距離を回答させていることから,注意は分の変化が,移動距離予測へ影響する事は明かである.しかし,それ以外について直接的な検討は無い.そこで,2点目は,物体の移動速度の予測に対する注意配分の影響を検討した.結果,注意配分の低減は移動速度予測に影響を及ぼさない結果が得られた.しかし,移動距離は大幅に短く見積もられていた.そこで,本研究よりも対象時間が長いが,注意配分の低減により時間が短く知覚されるとの報告(Zakay 1993)もあることから,注意配分の低減が,移動時間予測に影響を与えている可能性を仮定し,今後の検討課題としている.
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