Research Abstract |
本研究は,打具を使用したボールの打撃パフォーマンスの向上を目標とした知覚トレーニングの開発を目的としている.トレーニングの対象が,物体の運動認知能力や,身体の運動制御能力では無く,事前調査により分かっている,状況により変化する予測エラーのコントロール能力であるところが,今までの研究と大きく異なっている.そのために,まず,トレーニング開発の手段として,予測エラーの特性を明らかにする必要がある.本研究では,その方法として,等速で運動している物体を途中で遮蔽し,その後の物体の運動予測をさせる方法をとっている.平成23年度は,以下点について検討し,日本VR学会,日本VR学会心理学研究会において研究成果を発表した.また,新トレーニング法や戦略の理論的な提案をNatlonal Strength and Conditioning Association Japan Strength & Conditioning Conferenceにおいて発表した. 昨年度に,Control条件(すでに大幅に予測をエラー)よりも,運動物体への注意配分を増加させ,移動距離の予測エラーが消失することを証明したが,今年度は,注意配分を減少させ,移動距離の予測エラーがさらに増加するか否かについて検討した.注意配分の減少方法は,同時に記憶課題を行わせる条件,同時に意識して別空間に注意を向けさせる条件,同時に無意識に別空間へ注意を向けさせる条件の3種類で行った.結果,いずれの条件でも予測エラーの有意な増加が認められ,運動物体への注意配分の増減が,移動距離の予測エラーの増減に関係していることが強く示唆された. 上記結果を基に,本番と練習とで運動物体への注意配分を一定にしないとトレーニング効果が得られにくい可能性が有ること,そして,無意識でも空間的注意を追加(遮蔽板周辺の移動ストライプ)することによって,運動物体の移動距離の予測エラーが増加したことから,打撃直前に動くことにより,対戦相手の予測エラーを増加させ打撃ミスを誘える可能性が有ることが考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予測エラーの特性に関する研究は,おおむね順調に進んでいるが,その知見を応用した知覚トレーニング方法に関しては,理論的な提案を行うにとどまり,具体的方法の提案および検証にまではおよんでいない.その理由として予測エラーの特性が当初の予想以上に複雑であり,具体的な知覚トレーニング方法を提案できるまで,予測エラー特性の解析が進んでいないことにある,
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