2011 Fiscal Year Annual Research Report
コーパス言語学的アプローチによるクーベルタン・オリンピズムの受容史研究
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22500597
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
和田 浩一 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 准教授 (20309438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 謙次郎 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (40263636)
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Keywords | 言語学 / コーパス / クーベルタン / オリンピック / オリンピズム / スポーツ史 / 体育史 |
Research Abstract |
1.コーパスの作成 平成22年度分と合わせ、仏文図書4冊、英文図書2冊、仏文雑誌記事15編、英文雑誌記事7編のテキストデータを作成した。 2.データ分析 著者推定を想定した具体的な分析手法について検討した。その結果、テキストデータ分析に使用する伝統的な各種統計的手法に加え、近年目覚ましい発達を遂げたテキストマイニングの手法が、本研究にも十分応用可能なものであるとの結論に達した。テキストマイニングに関する参考文献等を収集し、最終年度での分析に備える準備を行った。 3.研究・論文発表 (1)東洋オリンピヤ大競技会の「瀬踏み」として位置づけられた博文館主催「冒険世界天幕旅行大運動会」(1908年7月25、26日)を取り上げ、日本におけるオリンピズム受容の一過程を検討した。薩摩琵琶、詩吟、剣舞等の芸術プログラムや会場に設置された万国旗など、クーベルタンのオリンピズムに共鳴する芸術性・国際性が、オリンピック運動に参加する以前の日本の運動会にあったことを指摘した(2011年9月)。 (2)正しい世界認識に必要な教養として示された「十本のたいまつ」と「知の飛翔」という教育方法論とが、クーベルタンのオリンピズムの中でどのように位置づけられるのかを整理した。細分化された教育が人間相互の無理解を生み、これが戦争の原因になるとクーベルタンは考えており、これがオリンピズムの平和思想を支える基盤になっていることを論じた(2012年1月)。 (3)日本におけるオリンピズムの受容が蘭学から英学への転換期に始まった点に注目し、幕末から明治前期に編纂された英和辞典におけるオリンピック用語について検討した。その結果、オリンピックは天文用語と地理用語としての意味が強く示され、体育用語としての競技会の意味はほとんど記されていないことが明らかになった(2012年2月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属先変更にともなう時間的制約の発生が交付申請時に予想できなかったこと、およびアルバイトに依頼した仏文テキストデータのチェック作業に予想以上の時間がかかり、「オリンピズム概念の経年的変化」を解明するために必要な、時代差のあるテキストのコーパス化作業が十分にできなかったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)コーパス化する資料を、データ分析の手法について蓄積のある英文資料にまずは限定し、(2)本研究の主目的である「著者推定」を、副次的目標である「オリンピズム概念の経年的変化」の検討よりも優先させ、本研究を構想するきっかけとなった英文雑誌記事の著者がクーベルタンである可能性に絞って議論する。
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Research Products
(6 results)