2011 Fiscal Year Annual Research Report
子ども達の睡眠習慣の改善が心身の健康やQOLの改善に及ぼす効果
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22500624
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
神川 康子 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (50143839)
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Keywords | 睡眠習慣 / 起床困難 / 起床前漸増光照射 / 発達段階 / 改善効果 / ヒーマンエラー / 主観的集中力 / QOL |
Research Abstract |
1990年代以降の子ども達の睡眠習慣の乱れに着目して、心身の健康や学力、生きる力(社会適応力、コミュニケーションカ、他者理解、学習意欲、集中力など)との関連について、子ども、家庭や学校での生活の実態調査をしながら研究を進めてきた。しかし、未だ子ども達の心身の健康改善のための生活習慣改善に対応できている家庭や学校、地域はほんの一部でしかない。そこで、汎用性のある生活習慣改善マニュアルを作成し、子どもの発達段階(乳幼児期、小学校低学年、小学校高学年、中学生期、高校生期、大学生、社会人)に応じて使用できる教材モデルを作成したいと考えている。 平成22年度は、全発達段階で課題となっている起床困難を改善するための方策を検証する目的で、起床前漸増光照射照明による改善効果を、小学生と幼児を対象に実験観察し、比較検討した。 平成23年度は、生活の制約が少なく起床困難が学業やQOL、に大きく影響している大学生を対象に同様の検証を行い、幼児、小学生との比較も行った。その結果、起床前漸増光照射は大学生で、幼児、児童ほどの改善効果は認められなかったが、「起床時刻の前進」、「目覚ましアラーム後の離床時間短縮」、「夕食時の食欲改善」には有意差が認められた。しかし、幼児、小学生に見られた「起床時、起床後、朝の気分の改善」、「就寝時刻の前進」、「睡眠時間の延長」は認められなかった。 また、睡眠習慣の乱れの最も大きい大学生において、ヒーマンエラー(単純計算問題)との関連についても検証実験を行った結果、午前10時と、深夜2時の脳機能低下が、主観的にも客観的にも大きく、就寝時刻が午前3時を過ぎると、一層日中の脳機能の低下が起こることが明確になった。 これらのことから、睡眠習慣の改善は乳幼児期や小学生期などの早い段階で行うことが、より効果的であることが示唆された。今後はさらに発達段階に応じた睡眠習慣改善プログラムを作成したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子ども達の全発達段階で課題となっている、起床困難の改善策について、幼児、小学生、.大学生で検証を行うことができた。また睡眠習慣の乱れが日中の脳機能の低下をもたらすことを、大学生にも実感を伴って示すことができた。さらには、睡眠習慣改善のための啓発プログラムとして、富山県教育委員会との連携により、インターネット上のコンテンツを作成することができた。しかし、当初予定の学校現場における睡眠習慣に関する大規模調査の準備に時間がかかかり、平成24年度に実施する運びとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大幅変更はないが、子ども達の睡眠習慣の影響としてのストレスやその耐性を客観的に、測定したいと考えている。例えば、唾液検査などで、測定できればと考えているが、学校現場での協力を得るための努力が必要があると思っている。そこで、学校保健委員会や保護者会等の講演会の場で、信頼関係の構築と、協力へのお願いをしていく予定である。
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Research Products
(7 results)