2012 Fiscal Year Annual Research Report
子ども達の睡眠習慣の改善が心身の健康やQOLの改善に及ぼす効果
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22500624
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
神川 康子 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (50143839)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | 発達 / 睡眠習慣 / 生活の自己管理 / 生活改善介入 / 心身の健康 / 学力 / 睡眠改善マニュアル / 実態調査 |
Research Abstract |
平成23年度までの研究では、睡眠習慣が子ども達の心身の健康や学力、生きる力(社会適応力、コミュニケーション力、他者理解、学習意欲、集中力など)にまで影響を及ぼすことが、徐々に明らかになってきた。さらに生活の質を向上させるためには、睡眠習慣の改善をできるだけ乳幼児期や小学生期などの早い段階で行うことが、より効果的であることも示唆された。そこで平成24年度は、乳幼児や小学校低学年の子ども達の睡眠環境を左右する保護者や地域等のおとな達が配慮すべき事を「7箇条」にまとめ、さらに小学生にできる生活の見直し項目を「チャレンジ25」として、日々時系列で確認できる生活改善および睡眠改善マニュアルを作成した。この「チャレンジ25」は、1回目に出来ることをチェックした後、学期毎などの一定期間ごとに、出来ることが少しずつでも増えていく実感が持てるように工夫し、現在、富山県教育委員会とも連携して、多くの保護者や学校現場で使用を試みている。また教育委員会では、働く人のためのインターネット家庭教育講座「子どもの眠り足りていますか?」として配信し、「子どもの眠り」についても動画で分かりやすく解説している。 最終的には、子ども自身が生活や睡眠習慣を自己管理できるようにし、睡眠習慣への改善介入が児童本人と、保護者、教員が共通理解してできるように作成した。その介入効果については、平成25年度により多くのデータを収集し、分析していく予定である。 一方で、子ども達の睡眠習慣を運動習慣や、食生活習慣からも改善する方策を見いだすために平成24年度から10000万人規模の調査を富山県を中心に石川県の学校にも協力してもらい、継続的に調査を実施している。 さらに睡眠習慣が確立していく過程における心身の発達経過を克明に調査・観察するために、乳幼児の睡眠記録を事例的に調査票と睡眠経過を記録する「眠りモニタ」で記録している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究室では、1986年頃より、子ども達の睡眠習慣の乱れに着目して、心身の健康や学力や生きる力(社会適応力、コミュニケーション力、他者理解、学習意欲、集中力など)との関連について、子ども、家庭や学校での生活の実態調査をしながら研究を進めてきた。一方、子ども達や保護者、教師の意識啓発にも積極的に関わってきたが、日本の子ども達の睡眠習慣は先進国の中では、最も最短、最悪とまで言われるに至っている。現実的には、睡眠習慣の重要性が認識され、子ども達の心身の健康改善のために対応できているのは、ほんの一部の地域や学校、家庭でしかない。そこで、本研究課題では、子ども達の発達段階(乳幼児期、小学校低学年、小学校高学年、中学生期、高校生期、大学生、社会人)に応じた生活習慣改善マニュアル(生活習慣の課題と改善方法および改善により期待できる心身の変化)の作成と、生活習慣改善による子ども達の心身の健康や学力、生きる力の改善や変化について研究を進め、科学的根拠をもとに解説し、学校や家庭でも、子ども自身でも使用できる教材モデルを作成することを最終的な目的として、研究を進めてきた。平成24年度には小学生を中心に、生活や睡眠を改善するためのマニュアルを作成し、学校現場で保健委員会や保護者会、また教育委員会の家庭教育講座を通じて多くの対象に睡眠習慣の重要性の科学的な理解を進め、睡眠改善マニュアルを実践的に使用してもらえるようになったので、当初目的は順調に達成されていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで以上に子どもたちの睡眠習慣の改善を図り、生活の質を向上させるために睡眠習慣の重要性を科学的に解説した教材と、睡眠改善マニュアルを使用して、子ども達の生活の自己管理能力を向上させ、心身の健康が保障される家庭や学校、地域の環境創りを目標としていく。さらに現在行っている10000万人規模の調査を分析して、睡眠習慣、運動習慣、食生活習慣を連動させて、子どもたちの健康度、運動能力、生活習慣病予防にも寄与できるように、成果を分析していく。 また、生活リズムの確立と乳幼児の成長・発達について行っている事例研究の分析も行い、睡眠と心身の発達についても科学的根拠を示しながら、保護者の理解を図りたい。その事が、日本の未来を担う子ども達の健やかな成長を促し、発達過程で生じやすい問題行動等についても抑制する一助になると考えている。 脳の健康を左右する睡眠習慣を改善することは、生きる力の育成、思いやりを持って他者理解ができる子ども、生涯学び続けようとする学習意欲を持った子ども、社会に貢献できる子どもの育成に繋がり、日本の未来を支える力になると確信している。 これらの効果を、生活習慣、心身の健康、学力、意欲、問題行動、人間関係等の様々な視点から検証していく予定である。
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Research Products
(9 results)