Research Abstract |
本年度は,本格的な地域介入を行う予定であったが,介入実施に必要なフォーマティブリサーチが不十分であったため,1)介入予定地区の30才以上65才未満地域住民における,自転車利用の実態を明らかにすること,2)エコロジカルモデルの概念に基づき、主観的な環境要因を含めて自転車の利用行動に影響を及ぼす心理社会的要因を明らかにすることを目的とした。福岡市城南区1449世帯の世帯主を調査対象とした.最終的に856世帯から回答が得られたが(回収率60%),その中で65歳未満432名のうち,全ての回答が得られた286名(有効回答率66%)を分析対象とした.調査内容は,基本属性,通勤の有無,通勤に利用する各交通手段の1週間あたりの利用回数・時間,自転車の利用に対するセルフエフィカシー,態度,行動意図,認知的バリア,モデリング,ソーシャルサポートであった.対象者の平均年齢は,52.9±8.7才であった.会社員の割合が57.0%と最も高く,通勤をしていると答えた者は74.5%であった.自転車利用に対する行動意図の分布は,自転車を利用してみようと全く思わないと答えた者が25%,少し思うと答えた者が41%,思うと答えた者が21%,とても思うと答えた者が13%であった.自転車の利用時間に影響を及ぼす心理社会,主観的環境的要因を検討するために,共分散構造分析を行った.その結果,最も適合度の高かったモデルは,週あたりの自転車利用時間にセルフエフィカシーのみが直接影響し(.37),認知的バリア(-.36)とモデリング(.15)は,セルフエフィカシーを媒介して影響するというモデルであった.よって次年度に予定する介入においては,モデリング手法を用いること,認知的バリアを減少させることで自転車利用に対するセルフエフィカシーを向上させる必要があるといえる.エコロジカルモデルで重要な変数とされる近隣の環境認知と1週間あたりの自転車利用時間との間に関連は見られなかった.
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