2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血ストレスセンサーとしてのグルコース受容体及びオレキシン神経の新規役割の解明
Project/Area Number |
22500683
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
徳山 尚吾 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70225358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 和歌子 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30382328)
中本 賀寿夫 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (30432636)
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Keywords | 生活習慣病 / オレキシン神経 / グルコース受容体 / 脳卒中 / 血糖値 |
Research Abstract |
本年度は、脳虚血ストレス負荷による肝臓および骨格筋の糖代謝機能変容に及ぼすbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)の作用の解析について検討を行った。BDNFの視床下部内局所投与により、脳虚血ストレス負荷後の肝臓および骨格筋において、血中のインスリン量には依存せずにinsulin受容体の発現減少を回復した。さらに、肝臓においては脳虚血ストレス負荷による糖新生の亢進が抑制された。加えて、梗塞巣形成、行動障害および学習記憶障害の改善が認められたことから、神経障害発現の抑制に視床下部におけるBDNFを介した糖代謝制御が寄与した可能性が考えられた。 さらに、脳虚血ストレス負荷による高次脳機能低下に対するグルコース受容体の関与について検討を行うために、sodium-glucose transporter(SGLT)ファミリーに着目し検討を行った。SGLT阻害剤であるphlorizinを用いて検討を行った。その結果、全身投与により、虚血1日後における空腹時血糖値の上昇を有意に抑制し、その後の神経障害を抑制した。したがって、腎尿細管におけるSGLTの阻害を介した糖再吸収抑制などによる虚血後高血糖抑制作用が神経障害抑制に寄与した。 一方、脳内SGLTの局所阻害では虚血後高血糖に影響を示さずに神経障害発現を抑制したことから、脳虚血ストレス負荷後に増加した糖が脳内SGLTを活性化し、Na^+やグルコースの細胞内流入によって脳虚血性神経障害発現の増悪に関与していた可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、脳卒中による神経障害の発症における臓器間連関の変容について解析し、加えて神経障害発症に寄与するグルコース受容体分子の関与を解析することを目的とした。本研究により、脳虚血ストレス負荷後早期に、肝臓におけるinsulin感受性の低下を介した糖新生の亢進による血糖値上昇が、orexin-AおよびBDNFの視床下部内投与によって抑制されることを明らかにした。すなわち、視床下部におけるorexin-Aは末梢組織におけるインスリン感受性の改善に重要な役割を担っていると考えられる。さらに、脳虚血ストレス負荷後に増加した糖が脳内SGLTを活性化し、脳虚血性神経障害発現の増悪に関与していた可能性が示唆した。しかしながら、orexin-AやBDNFの視床下部を介した末梢臓器の機能改善機序についてはまだ不明な点があるため、今後その詳細な機序を解明して行く必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
脳虚血ストレス性脳高次機能障害発現におけるストレスセンサーとしてのグルコース受容体の役割の解明についてさらに検討を行う。具体的には、(1)脳におけるグルコース受容体の分布/局在解析、(2)脳虚血ストレス誘導性の耐糖能異常の発現ならびに神経障害発現におけるグルコース受容体の関与、そして、(3)脳虚血ストレス誘導性のオレキシン神経障害発現におけるグルコース受容体の関与について検討を行い、オレキシン神経の変容、ならびに、脳虚血性の記憶学習障害など、脳高次機能の低下に対するグルコース受容体分子の関与について解明する。これにより、脳卒中の転帰に影響を及ぼす「血糖値」の制御機構を分子レベルで解明することができ、治療戦略開発へ貢献できる。
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