2011 Fiscal Year Annual Research Report
周産期医療を組み込んだ子育てハイリスク群支援ネットワークの実践モデルに関する研究
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22500707
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Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
井上 寿美 関西福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (40412126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹倉 千佳弘 就実短期大学, 幼児教育学科, 准教授 (60455045)
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Keywords | 妊婦健診 / 未受診妊産婦 / 社会的ハイリスク / 周産期 |
Research Abstract |
A.妊婦健診未受診妊産婦の実態調査を踏まえた研究の成果は下記のとおりである。 (1)生活者としての未受診妊産婦は、「(1)周産期における言動の理由を推察することが容易であり、かつ、周産期の言動が了解可能である場合、(2)周産期における言動の理由を推察することが容易でなく、かつ、周産期の言動が了解困難である場合の2つに分類できる。 (2)「助産師からみた外見が『普通』である/ない」、「助産師からみた言動が非社会的である/ない」、「助産師からみた言動が反社会的である/ない」、「出生した児の養育をおこなう/おこなわない」という指標を用いると、上記の(1)、(2)は、それぞれがさらに3つの類型に細分化された。 (3)「周産期における言動の理由を推察することが容易でなく、かつ、周産期の言動ず了解困難」である未受診妊産婦は、支援の前提となる「理解」に困難さが伴う未受診妊産婦である。したがって、周産期医療を組み込んだ子育てハイリスク群への支援は、彼女たちをどのように理解するのかということから始めなければならない。 (4)社会的ハイリスクが顕在化している未受診妊産婦に対する支援は、それぞれの類型に即して行う必要がある。たとえば、母親になるための支援を行う以前に、人として生きるための支援を行わなければならない場合がある。 (5)実親による子育てが子どもの最善の利益を保障することになり難い子どもの存在が明らかになった。 B.「こうのとりのゆりかご」の実地調査、「地域養護」にとりくむ岩手県和賀郡西和賀町の実地調査をふまえた研究の成果は下記のとおりである。 (1)子育ち・子育てのしくみは、実親による子育てに期待できない子どもが、そのことで欠落感や喪失感を抱かないようなものとして構築する必要がある。 (2)被虐待児等、すべての子どものすごやかな育ちを保障するために、子育ち・子育てを支える地域社会のエトスを議論する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年度~2011年度の2年間の研究をまとめた中間報告書『子育てハイリスク群としての妊婦健診未受診妊産婦の実態に関する研究報告』を2012年3月に刊行した。具体的な進捗状況については下記のとおりである。(1)妊婦健診未受診妊産婦の実態調査の結果、妊婦健診未受診妊産婦の類型化を行い、典型事例を示すことができた。(2)医療法人聖粒会慈恵病院「こうのとりのゆりかご」実地調査の結果、子育てハイリスク群の親子に対する周産期からの支援の現状と課題が明らかになった。(3)岩手県和賀郡西和賀町(旧沢内村)の調査により、社会的養護の下にある子どもたちにとっての「子育ての社会化」を支える地域のエトスを分析するための資料収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
A.社会的ハイリスク妊産婦である妊婦健診未受診妊産婦に焦点を絞り、次の3点を目的とした研究を行う。なお以下では、妊婦健診未受診妊産婦が出産した場合、生物学上の母親になったという意味で<母親>と記す。(1)2011年度に提示した妊婦健診未受診妊産婦の類型化をさらに精緻なものとする。(2)<母親>に顕在化している社会的リスク、およびそのリスク要因を、「(1)」の類型に即して検討する。(3)類型に即した社会的リスクに対応可能な<母親>支援を行うにあたり、既存の周産期医療を組み込んだ子育て支援の可能性と限界について明らかにする。 B.児童養護施設の子どもたちを地域で育てる「地域養護」のとりくみにより、子どもたちはいかなる育ちを経験し、またその経験がどのようにして子どもの生き抜く力となっていくのかについて検討する。「地域養護」の取り組みを可能としている地域社会のエトスを、地域住民が綴った文集の分析等をとおして明らかにする。
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Research Products
(8 results)