2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代の生政治学的視座から見た生命倫理学の政治的・哲学的射程をめぐる研究
Project/Area Number |
22500960
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金森 修 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (90192541)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 生政治 / 死政治 / 亜人論 / ゴーレム / 動物論 / 放射線障害論 |
Research Abstract |
本年度は、従来の資料を十全に使用し、具体的な成果をいくつかの書物の公刊という形で表すことができた。 まず3.11後の国家の被災地対策や放射線障害対策を批判的に照射し、そこに普通の一般人民の保護、とりわけ年少者の保護というよりは既存の権力構造の保護という傾向が見られるということを批判的に剔抉した。それは、現代的な意味での生政治が、死政治に適宜反転するという驚くべき現実を表現するものでもあった。 また他方で、人間未満・人間以下と人間圏との間の境界領域の特定と、それを巡る問題群を具体的に追跡するということで、本年度は、ゴーレムの文化的表象と、動物論一般への接近を果たすことができた。 繰り返すが、それらそれぞれの主題について、具体的成果を公刊できたことはとても良かったと思っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3.11以後の国家の人民生命保護政策の不充分性を批判的に検討することができた。 また、亜人論の具体例として、ゴーレム論と、動物論をたちあげ、それぞれを論攷や本にすることができた。 これらは総体として、現代日本社会において、生命を巡る政治的介入がどのような傾向性をもつのかについての対自化をなしえていると考える事ができる。 これは、途中段階としては一定の成果であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、人間圏が、生物学的同一性によって自明的に保証されるものではなく、人間を人間と見なすか見なさないかという政治的・文化的判断と相即的なものだとみなすという基底的発想を継続しながら、私なりの人間圏論、亜人論を継続することで、現代の生政治論の成熟に向けた一歩としたい。 とりわけ最終年度である次年度に於いては、ゴーレム、動物に続く、他の側面からの亜人論を構想し、それを書籍として纏め上げる予定である。
|
Research Products
(6 results)