2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代の生政治学的視座から見た生命倫理学の政治的・哲学的射程をめぐる研究
Project/Area Number |
22500960
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金森 修 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (90192541)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生権力 / 生政治 / 人間圏 / 放射能汚染 / 科学者集団の政治性 / 情報操作・印象操作 |
Research Abstract |
本研究は、フーコーを起原とする生権力、生政治概念を重要な理論基盤としながら、それによって現代社会の諸事象を批判的に分析することを目指すものだった。ただ、研究開始当初は、アガンベンのゾーエーやビオス概念など、通・文化的な概念装置を援用しながら比較的一般的な生命論・権力論を構想する予定であった。ところが、その過程で3.11という大事件、とりわけ福島第一原発の大事故が起きるという予想外のことがおきた。しかも特に原発事故後の我が国の政治的状況、それに呼応した科学者集団の挙動をみるにつけ、我が国に於いては、全体の安寧と利益集団の権力構造の温存を図りながら、〈人間の命〉を二次的に扱うという、まさに生権力的な構図がほとんど露わな形で作動しているということを、強く実感せざるをえなかった。そのため、一般的で通・文化的な議論を中心にするという当初の企画を変更し、より現代日本の個別具体的な諸事象に密着した批判を行うことの方が有効かつ重要であろうという認識に到達した。その問題意識に即して、日本哲学会学会誌論文、アステイオン論文、日本宗教学会学会誌論文という三つの論攷を立て続けに公表できたことは幸いであった。 福島県民の苦悩の周辺化、放射能汚染の技巧的な過小評価、マスコミさえも巻き込んだ巧みな情報操作などの一連の事象は、いかに、我が国が国民の安全や幸福などには本気では向き合っていないのかという、酷薄な実態を露わにしている。これに対峙することは、哲学や生命倫理学などの学問的作業がもつ理論的性格を実はかなり横溢したものである。その意味で、思いがけず本研究は、本来、アカデミックな心性の強い私のような人間に、従来より積極的な社会的発言を促す契機として働くことにもなった。これもまた、本研究の副次的な成果の一つといいうる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(8 results)