2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500966
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 満 明治大学, 文学部, 教授 (10189855)
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Keywords | 小野蘭山 / 衆芳軒 / 宮地郁蔵 / 『西帰録』 |
Research Abstract |
2010年はちょうど小野蘭山没後二百年に当たったため、記念事業会が組織され、記念誌の出版を中心に、東京会場では記念式典・シンポジウム・記念展示を、京都会場では顕彰碑の建設と除幕式・国際シンポジウム・京都府立植物園所蔵大森文庫展などを開催した。私はこの記念事業にあたって、記念誌編集委員および東京会場担当幹事として参画した。私はこの記念出版物『小野蘭山』(八坂書房、2010年6月25日発行)に、今後の蘭山研究の基礎資料として利用に供するため、これまで収集してきた小野蘭山書簡90通を全文翻刻して紹介した。また、蘭山の採薬記と書簡を主たる史料として、蘭山の本草学において、いかに「採薬」(実物の観察)が重視されたかを指摘し、また、衆芳軒塾の規定や書簡を通して、蘭山の門人教育、また門人との情報交換の実態をみた。 蘭山門人についても調査してきたが、本年度は宮地郁蔵が蘭山塾を退塾し、郷里高知へ帰郷した際に書き残した『西帰録』の草稿本二点(A本・B本)を見出した。A本は第一草稿で、多数の朱筆による校正案文が貼付される。B本は第二草稿で、ほぼこの朱筆案文に沿った訂正がなされている。中城直正「土佐の本草学者宮地郁蔵先生」(『土佐史談』第11号、大正13年10月発行)に紹介された『西帰録』は、おそらく上記の第二草稿にもとづく最終稿本だろう。これには蘭山の塾での同門井口道貞が文化6年(1809)4月の日付で序を寄せ、巻末に帰郷の途路におこなった採薬の記録「植物採集目録」を付しているという。中城氏によれば桑田精一氏の所蔵には『西帰録』最終稿のほか、宮地郁蔵『常毛紀行』『富士山記』があったという。残念ながら、これらの所在は判明しなかった。
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Research Products
(4 results)