2011 Fiscal Year Annual Research Report
第四紀における東南極氷床高度の急激な低下の原因と影響の解明
Project/Area Number |
22500991
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
菅沼 悠介 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (70431898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 英樹 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (10271496)
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Keywords | 第四紀学 / 地形・地質学 / 地球システム変動学 / 古環境復元 / 南極氷床 / 氷床高度復元 / 地球温暖化 / 未来予測 |
Research Abstract |
本研究では,東南極内陸山地での地形・地質学調査を実施し,1)氷床変動の痕跡(氷河地形)の認定と,2)表面露出年代に基づき詳細な氷床高度変動史の復元を行う.そして,3)第四紀における氷床高度低下の時期,空間分布,原因,そして地球気候システム変動への影響を解明することを目的とする. 当該年度は,第53次南極観測隊に参加し,セール・ロンダーネ山地西・中部で詳細な地形データ(氷河地形・GPS測量)の取得を行った.当調査では,特に第51次での調査で網羅できなかった地域や,特に重要と考えられる最終氷期以降の氷床変動を反映している現氷床側部のモレーン帯について,集中的にデータの取得することができた. 22年度に行った風化度評価に基づく氷河堆積物のステージ分けと,基盤岩・迷子石試料を用いて表面露出年代測定結果に基づき,セール・ロンダーネ山地における氷床変動史の復元を進めた.特に,セール・ロンダーネ山地における約700mの東南極氷床高度の低下が,段階的なものであった可能性について詳細な検討を行った.そして,風化度評価結果の詳細なデータやこの段階的な氷床高度低下などセール・ロンダーネ山地における長期的氷床変動に関する記載学的な論文の執筆を進めた. また,ニュージーランドの核化学研究所との共同研究で習得した加速器質量分析の前処処理・分析技術を基に,国立極地研究所内の試料前処理システムの構築を進めた.これまでに必要機器のセットアップなど基礎的なシステム構築の準備を完了することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い,第53次の南極地域観測隊に参加し,現地調査に基づく詳細な地形データを取得することができた.また,風化度評価および加速器質量分析についても,当初の計画通り必要な技術習得も完了し,実際の分析・測定を進めることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,第51・53次の南極調査で取得したデータの解析・まとめを基に過去の氷床変動を復元する.特に,Moriwaki et al.(1991)の手法に基づく岩石種毎の表面形状および酸化度による区分に加えて,エコーチップ法による表面硬度の評価および全岩化学組成分析(XRF分析)に基づく化学風化度(Chemical Wethering Index)を総合的に評価して,露岩試料の定量的な風化度評価を行う.そして,この定量的な風化度評価に基づくセール・ロンダーネ山地の氷床変動について,記載学的な論文を執筆する. 上記で求めた相対的な氷床変動に対して,絶対的な年代値を与えるために宇宙線照射年代測定を進める.特に,ニュージーランドの核化学研究所で習得した分析技術を基に,国立極地研究所内の試料前処理システムの完成させる.また,加速器質量分析については,ニュージーランド核化学研究所の加速器とともに,オーストラリア核化学研究機構の加速器も併用することで,迅速に表面露出年代測定を進める.最後に,これまでの得られた宇宙線照射年代測定結果をまとめ,総括的な論文の執筆を行う.
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