2010 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌におけるフコシル化糖鎖合成系の異常とバイオマーカー開発に関する研究
Project/Area Number |
22501029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋田 弘俊 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70222528)
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Keywords | 非小細胞肺癌 / 糖転移酵素 / α1,6-フコース転移酵素 |
Research Abstract |
本研究では、糖転移酵素α1,6-フコース転移酵素(α1,6-FT)に着目して、非小細胞肺癌における発現異常(発現の低下・喪失)を免疫組織化学法で解析し、臨床病理学的因子、患者予後、細胞増殖能、各種分子マーカー発現、他の糖転移酵素発現との関係を解析して、非小細胞肺癌におけるα1,6-FTの発現異常の臨床病理学的意義を明らかにすることを目的とした。 非小細胞肺癌手術摘出腫瘍156腫瘍を材料として、α1,6-FTの発現について特異抗体を用いて免疫組織化学染色法(Streptavidin biotin法)で解析した。肺癌組織における解析と同時に、肺葉切除された同一手術摘出材料内に存在する正常肺・気管支組織おける発現を解析した。α1,6-FIに対する特異抗体は、大阪大学大学院医学研究科生化学・分子生物学教室が開発したものを用いた。 α1,6-FTの発現は、正常気管支上皮細胞、正常気管支腺細胞では認められた。非小細胞肺癌においては、α1,6-FTの高発現、中等度発現、低発現をそれぞれ25腫瘍、35腫瘍、96腫瘍で認めた。α1,6-FT低発現は、性別(男性)、喫煙状況(喫煙者)、組織型(扁平上皮癌)と有意な関係を認め、多重回帰解析の結果、組織型(扁平上皮癌)と有意な関係を示した。また、α1,6-FT低発現腫瘍ではKi-67ラベル率とcyclin Eラベル率が有意に高値で、GalNAc-T3およびGnT-Vの低発現頻度が有意に高かった。α1,6-FT発現は術後生存期間と統計学的に有意な関係を示さなかった。 以上から、α1,6-FT低発現は非小細胞肺癌の組織型(扁平上皮癌)に関係するバイオマーカーと考えられた。
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