Research Abstract |
九州南部は,温帯性種と熱帯性海藻の分布推移帯・混生域となっており,本海域を分布の南限や北限とする種が多く知られている。藻場の景観や群落構造は構成種で大きく異なることから,この海域ではわずかな緯度変化や生育環境で海中の景観が著しく変化する。近年,日本各地で生物相の変化が指摘されており,温暖化との関連が示唆されている。海藻類の植生変化も指摘されているが,温帯と亜熱帯推移帯である九州南部では,環境変動の影響をより顕著に受けることが考えられる。特に,温帯性種の分布南限群落は衰退や消失が危惧されることから,藻場植生の現状を的確に把握すると共に,今後の変動に関する影響評価が求められている。本課題では,九州の主要な藻場構成種であるカジメ科やホンダワラ科藻類,海草類の南限個体群を材料とし,1)各種群落の群落構造と個体群動態の解明,2)南限群落の環境耐性の特異性と生育環境を解明することを目的とした。 平成23年度は,鹿児島湾および薩南諸島島嶼域におけるホンダワラ類や海草類の分布状況を整理し,各種の南限や北限を明らかにした。また,熊本県天草下島近傍の温帯性ホンダワラ科藻類5種(ジョロモク,ヤナギモク,トゲモク,ノコギリモク,ヨレモク)と鹿児島湾のコナフキモク(ホンダワラ科),ワカメ(アイヌワカメ科),アマモ(アマモ科)の分布南限群落の群落構造を調査し,酸素電極とパルス変調クロロフィル蛍光測定法を用いて光合成特性を明らかにした。有用海藻の生理生態学的特性の解明では,トサカノリとキクトサカ,トゲキリンサイ,カタメンキリンサイ(ミリン科)の至適光・温度環境を上述の手法を用いて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進展しており,初年度の研究成果分を原著論文(査読制)3報,総説(非査読制)1報として公表した。2年目の研究成果は4報が受理されており,2012年中に公表される予定である。
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