Research Abstract |
国内起因の海洋ごみの太平洋への流出実態を明らかにすることを目的に,日本辺縁部および北西太平洋の島嶼部海岸において,起因地が明らかなディスポーザブルライターを指標漂着物として採集し,その消費製造国および配布地を求めた。H23年度は,北西ハワイ諸島(ミッドウェー環礁1,028本),ハワイ諸島(オワフ島13本,マウイ島249本,ハワイ島24本,カホラウェ島237本),茨城県神栖市(矢田部海岸400本)にて採取調査を行った。また全国のビーチコーマー(海岸漂着物収集家)や海岸清掃事業者に依頼し,日本国内海岸からもライターを収集した。特に今年度は,手法比較のため,オーストラリア(ノーザンテリトリー)から565本のライターを得ることができた。さらに実地踏査を行ったミッドウェー環礁では,コアホウドリが洋上で誤食したカキ養殖用パイプ,プラスチックボトルキャップ,ライターを採取し,その密度等を求めた。その結果,ミッドウェー環礁では,海岸部よりもコアホウドリが営巣する内陸部でこれら3品目の密度が高く,海面にこれらが漂流していることがわかった。その構成比率はキャップ:カキ養殖用パイプ:ライター=8:4:1であり,判別できたもののうち日本起源の割合は,すべてが日本を起源とするカキ養殖用パイプを除いて,キャップで4割,ライターで6割となった。一方,ハワイ諸島で採取したライターの流出地(配布地)は,ミッドウェー環礁同様,東アジアが主であり,日本起源のものは太平洋沿岸および太平洋と接続する内湾域であった。これより日本起源の漂流ごみは,ミッドウェー環礁だけでなく,ハワイ諸島へも到達し,影響を与えていることがわかった。一方,オーストラリアノーザンテリトリーで採取されたライターには,日本を流出地とするライターは含まれておらず,赤道を越えてアラフラ海やティモール海に達することは難しいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直接調査だけでなく,現地のビーチコーマーの協力により,調査対象である北太平洋の北西ハウイ諸島,ハワイ諸島,小笠原諸島,伊豆諸島,台湾のサンプルを得ることができた。また各国の研究協力者によるネットワークを通じて,北太平洋周辺のティモール海,アラフラ海(オーストラリア)からのサンプルを得ることもでき,試料を比較することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,アメリカ大陸西岸,アンダマン海(タイ)でのサンプル採取を依頼している。また本研究開始後,津波による大量のがれきが北太平洋に流出した。本研究は,がれき漂着前のサンプルを用いた日本全国から北太平洋へ流出した漂流ごみの影響に関する調査であり,タイミングとしては最適であった。また本研究の成果から,津波がれきの行方に関する知見も得られ,研究の過程でハワイ大学や環境省との協力による津波がれきの洋上での目視観測へと発展したことは有意義であった。
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