2011 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫忌避剤・防虫剤の吸入暴露による化学物質過敏症などの炎症性疾患発症と病態解析
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22510072
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
横田 恵理子 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (10222457)
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Keywords | 炎症 / アレルギー・ぜんそく / 化学物質過敏症 / シグナル伝達 / 防虫剤・殺虫剤 |
Research Abstract |
家庭や地域において日常的に頻繁に使用されている、昆虫忌避剤(DEET:N,N-diethyl-m-toluamide)やピレスロイド系防虫剤の細胞機能に及ぼす影響を検討した。 1.ヒト白血病細胞(HT93)の活性型レチノイン酸による好酸球様への分化誘導:分化の指標として形態変化、転写因子GATA-1の発現、サイトカイン(エオタキシン-2)の産生とその受容体CCR3の発現に着目してDEET(0.3-1mM)の影響を検討した。DEET存在下で、形態変化や転写因子GATA-1発現に大きな変動はみられなかったが、CCR3発現は抑制傾向がみられた。分化誘導後、種々のサイトカインで刺激し、エオタキシン-2産生を検討したところ、DEET存在下で分化誘導した細胞ではインターフェロンγによる産生が増強されたため、分化の方向が変化する可能性が考えられた。一方、ピレスノイド系防虫剤のアレスリン(25~100μM)は、核の断片化を伴う細胞死を誘導した。アレスリンによる細胞死では、刺激後2~4時間でカスパーゼ3の活性化が、8時間後には核の断片化が検出された。 2.ラット由来マスト細胞(RBL-2H3)に対する作用:DEETは抗原依存性脱穎粒反応を弱く抑制した。抗原刺激後、一部の細胞内シグナルの活性化が持続的に認められたため、サイトカイン産生に及ぼす影響を検討した。抗原刺激24時間後のIL-10,IL-4,IL-6およびTNFα産生は、低濃度のDEETでは抑制されたが1mM以上では抑制されなかった。また、アレスリンは抗原依存性脱顆粒反応を抑制したが、一部の細胞内シグナルの活性化もおこした。アレスリンはDEETと異なり、抗原非存在下でも単独で細胞内シグナル(ERK,Sykなど)の活性化および脱顆粒を誘導したことから、抗原に依存せずマスト細胞を活性化する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養細胞を用いた実験のみで終始し、in vivo系実験(動物実験)を行なうに至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
DEETやピレスノイド系防虫剤が、顆粒球やマスト細胞に対してその機能や生存に影響することが示唆されたので、今年度はそれら結果の確定を行なうとともに、II型肺胞上皮細胞やヒト肺由来繊維芽脂肪を用いて、サイトカイン・ケモカイン産生への影響について重点的に検討する。また、成熟(7~8週令)または幼若マウス(3~4週令)にこれら化学物質を反復投与し、単独投与による鼻粘膜・気道炎症発症の有無やオバルブミン誘導喘息モデルへの影響などについて検討する。
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