2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化・人口減少・財政危機が進む地域再生のあり方についての研究
Project/Area Number |
22510278
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
橋本 行史 関西大学, 政策創造学部, 教授 (30319826)
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Keywords | 地域再生 / 産業活性化 / コミュニティ再構築 / 地域資源 / 地域のライフサイクル / 多世代居住 / 高信頼社会 / アントレプレナーシップ |
Research Abstract |
グローバル化はグローバル拠点に一極集中を進める一方で他地域の経済疲弊と人口減少を招く。過疎地域を支援すべき国や自治体は、福祉国家思想に基づく過去の積極的な公共投資や社会保障負担で財政悪化が進む。この状況は日本では普遍化しているが日本の後を追って工業化を進めてきたアジアでも今後直面する課題である。その意味でも日本の条件不利地域を先行事例として調査し、地域再生に向けての知見を得る意義は高い。本研究は地域再生を産業の活性化とコミュニティの再構築の両局面から捉えるものとし、22年度は北海道夕張地区を中心にして旧産炭地域で基礎調査を実施した。由仁町では主要産業である農業振興の現状と課題の解析を行った。良質な農作物を産出する土地にもかかわらず、若者は賃労働を好んで大都市での就職を望み、農業を続ける高齢者は手間の掛かる野菜やフルーツ栽培よりも安定した収入のある米作を選ぶ実態が浮かび上がった。栗山町の小林酒造(株)では、アントレプレナーシップ溢れる経営者によって、炭鉱夫好みの安価で濃厚な酒を大量に供給してきた酒造メーカーが炭鉱閉山と人口減少・消費者の日本酒離れによる生産量減少という厳しい環境に直面して、レストランや売店の開設による酒蔵の観光拠点化や札幌の飲食店とのタイアップイベントにIT会員を集める方法によって、自社製品の消費拡大に成功している例を調査した。夕張市では、過疎地域の住民の安全を守るための市営住宅への若年者の優遇入居の仕組みと、市内に進出した日本最大の漢方薬メーカー「ツムラ」の進出動機とその戦略をヒアリング調査した。今後、事例調査を積み重ねることによって地域再生の成功モデルの類型化を検討する。
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