2010 Fiscal Year Annual Research Report
プラトンにおける「死後の神話」の哲学的意義の国際的研究
Project/Area Number |
22520004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荻原 理 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (00344630)
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Keywords | 哲学 |
Research Abstract |
本年度は主にプラトン『国家』結びの「エルの神話」の哲学的意義の解明を行なった。2010年8月2-7日に慶應義塾(三田)で開催された国際プラトン学会大会(テーマは『国家』)に参加し、6日に'The Choice of Life in the Myth of Er'と題する研究発表を行なった。「エルの神話」における生の選択を、人間がこの生で行なう選択の寓意的表現としてではなく、字義通り、死後に魂がハデスで行なうこととして解釈しても、生と死の交替をへめぐる魂の旅路についての相当程度一貫した、しかもプラトンの基本的思想にもそぐう描像が得られることを示した。内外の研究者との議論をふまえ発表原稿を改訂し、同大会のSelected Papersのために投稿した。8月10日に東北大学にてGiovanni Ferrari氏(カリフォルニア大学バークレイ校),Suzanne Obdrzalek氏(クレアモント・マッケナ・カレッジ)をスピーカーとする、「プラトンの神話」と題するシンポジウムを開催し、また両氏から専門的知識の提供を受けた。プラトンが人間の受肉の事態をどの程度ペシミスティックに捉えているかという興味深い問題が浮上した。また、神話と自由の関連の多層性が明らかになった。『理想』(2011年3月。「プラトンの「国家」論」特集号)に「ジョヴァンニ・フェラーリの『ポリテイア』解釈の一端」と題する論文を発表し、『国家』でソクラテスがグラウコン・アデイマントスと対話していることの積極的意義(哲人王の理想にひきつけることで、両兄弟を静寂主義者の殻から引きずり出す)を捉えるフェラーリの興味深い読み筋を紹介・考察した。
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Research Products
(3 results)