2011 Fiscal Year Annual Research Report
プラトンにおける「死後の神話」の哲学的意義の国際的研究
Project/Area Number |
22520004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荻原 理 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (00344630)
|
Keywords | 哲学 / プラトン |
Research Abstract |
『国家』のエルの神話については、前年度国際プラトン学会大会での発表原稿の改訂版が同学会の査読付きインターナット・ジャーナルPlatoの2011年12月公開の号に掲載された(題名はいずれも'The Choice of Life in the Myth of Er')。改稿に当たり(1)筆者は必ずしもハデスでの生の選択の寓意的解釈を否定せず、神話の多層的意味合いの一つの層の解明として字義的解釈を試みていることを明らかにし、(2)ハデスでの生の選択に際し魂は生の選択肢について何を知っており何を知らないかの特定を糟緻化する、などにより議論の水準や説得力を高めた。 『法律』第10巻の神話については、19月のギリシャ哲学セミナー大会にて発表を行い、大会での質疑応答等をふまえた改訂版が同学会の『ギリシャ哲学セミナー論集』インターネット版の3月公開の号に掲載された(「プラトン『法律』第10巻903a-905dの、神による魂の再配置の話について」)。死後の罰にふれるプラトンの他の神話と違い『法律』のそれには、罰が魂を改善するという考えが見られないようである点を指摘した。これは『法律』の議論の哲学的水準の制限と関連すると思われる。また、死後の賞罰の陰に隠れるように生時の賞罰も言及されることを、(1)死後に焦点を合わせたのは、話を聴く者の理解力の金体的水準に合わせてのと乏で、(2)しかし生時の賞罰にも触れたのは、このより難解な点もできるだけ聴き手に理解してほしかったからだと分析した。これは共同体統治の場面でのかかる言説力移種の人々に同時に向けられる事態の反映だろうと示唆した。なお第10巻で、客人と無神論の若者との想定問答がなされる場面と、マグネシアで宗教が語られる場面(精神健全化院での説諭を含む)の区別の必要を説いた。 重要な両テクストについて新たな視点からの解明がなされたことと思う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雑誌論文2本(うち1本は査読付きの国際ジャーナル)を発表し、学会発表を1つ行ない、『国家』と『法律』の死後の神話について独自の視点からの解釈を提示しえた。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画通り進める。 ただし次年度は『パイドロス』の死後のミュートスの哲学的意義を解明するにあたり、エロースという共逓の主題を扱う『饗宴』との比較に留意することにする。
|
Research Products
(3 results)