2012 Fiscal Year Annual Research Report
プラトンにおける「死後の神話」の哲学的意義の国際的研究
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22520004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荻原 理 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00344630)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プラトン / 国際研究者交流 / イギリス |
Research Abstract |
国内外の諸研究者との意見交換や文献の収集・読解を通じて、プラトンの死後の神話が持つ哲学的意義について、『法律』におけるそれを中心にさらに解明を進めた。 8月7日、オクスフォード大学にての学会 'Freedom and State: Plato and the Classical Tradition' にて 'How free Magnesians are to speak and think about the gods -- a remark on the city of Plato's LAWS' と題する発表を行なった。『法律』第10巻の死後の神話が国家統治のイデオロギーとしていかに機能させられるかについて、あるリベラルな解釈を退けつつ論じた。ゲルツ(コメンテータ)、ブラウン、クープ、マロモドロの諸氏と有益な議論を行なった。 10月5-6日にペンリルヴァニア大学にての「プラトンを解釈する――チャールズ・カーンの栄誉を称えるコンフェランス」に参加し、カーン、パターソンらとプラトンの死後の神話について有益な意見交換を行なった。 11月11日、中世哲学会大会のシンポジウム「中世におけるプラトニズム」にて「トマスの存在理解をめぐる上枝氏の提題に寄せて」と題する提題発表を行なった。トマスを差し当たりの素材とし、直接には非神話的言説を主題領域としながらも、イデア論と超越者認識の関連、超越者についてどう語り得、どう語り得ないか、の原理的問題に論及、神話的言説にまつわる諸事情を逆照射した。 共著者として PRESOCRATICS AND PLATO(編:Patterson, Karasmanis, Hermann)を公刊、寄稿は 'False Pleasures: PHILEBUS 36c-40e'. 想像力についてのプラトンの重要な考察を主題とし、神話的想像力の諸側面を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラトンの死後の諸神話のうち『国家』・『法律』に集中し、その哲学的意味の解明をおおむね順調に行なってきた。哲学的重要性から、この集中は正しかったと思われる。ただし残り1年間なので、他の対話篇にも視野を拡げる必要がある。 成果としては、すでに論文を5本発表している:(1)‘The Contrast between Soul and Body in the Analysis of Pleasure in the PHILEBUS’, (2)「ジョヴァンニ・フェラーリの『ポリテイア』解釈の一端」、(3) 「プラトン『法律』第10巻903a-905dの、神による魂の再配置の話について」、(4)‘The Chice of Life in the Myth of Er', (5) 'False Pleasures: PHILEBUS 36c-40e'. うち、本研究課題に特に関係するのは (3)と(4)(査読付は (1)と(4))。 口頭発表を4回行っている:(1)'The Choice of Life in the Myth of Er', (2)「プラトン『法律』第10巻903a-905dの、神による魂の再配置の話について」、(3) 'How free Magnesians are to speak and think about the gods -- a remark on the city of Plato's LAWS', (4)「トマスの存在理解をめぐる上枝氏の提題に寄せて」. うち、本研究課題に特に関係するのは (1)-(3). 国際シンポジウムを1回開催している:「プラトンの神話」2010年8月10日、東北大学、提題者はGionanni Ferrari (UC Berkeley), Suzanne Obdrzalek (Claremont MnKenna College)。
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Strategy for Future Research Activity |
プラトンの死後の神話が持つ哲学的意義の解明に向けて、今後もこれまで通り、国内外の研究者と活発な意見交換を行ない、文献を検討しながら研究を推進し、積極帝に成果を発表していく、という基本的方策に変わりはない。 ただし、〔1〕研究期間中これまでは、プラトンの死後の諸神話のうちでも、『国家』・『法律』のそれに集中してきた(その判断がそれとして適切だったことについては上の「現在までの達成度」参照)。残る1年間で他の対話篇における死後の神話にも視野を拡げたいが、とくに『ゴルギアス』・『パイドン』のそれに着目したい。『パイドン』のそれについては、宇宙論的記述を含む点が興味深いが、両作品の神話は、対話篇中のこれに先立つ部分(いわば明示的に哲学的・倫理的な議論)との関連が注意深い解釈を要し(この点、D・セドリーの 'Theology in Myth in the PHAEDO', 'Myth, punishment, and politics in the GORGIAS' が示唆を与えてくれる)、本研究の視点からとりわけ重要だからである。 〔2〕『法律』第10巻の死後の神話の研究を通じて、死後の神話を含むイデオロギー装置が、『法律』で構想される型の国家統治においていかなる機能を賦与されているかという問題の重要性が気付かれてきた。その研究成果はすでにオクスフォード大学での学会にて 'How free Magnesians are to speak and think about the gods -- a remark on the city of Plato's LAWS' との題で発表したが、その学会での議論などを踏まえ発展させる余地がある。その改訂版の論文を海外の査読付き雑誌に投稿する予定である。 最終年度である次年度にこれまでの研究の成果を総括するが、これを書物として刊行することを目指す。
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Research Products
(3 results)