2010 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーション論とコーチング理論の複合による高校・大学での倫理学授業の再構築
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22520008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
五十嵐 沙千子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (10365992)
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Keywords | コミュニケーション論 / 高等教育 / 哲学カフェ / ポストモダン / 倫理学・哲学の授業改革 / ハーバーマス / ハイデガー / 授業実践 |
Research Abstract |
本年度は研究の初年度であるため、コミュニケーション論を用いてどのような倫理学・哲学の授業が可能なのか、まず基礎的研究を行った。 理論面では、ユルゲン・ハーバーマスのコミュニケーション論をはじめとするポストモダン思想を中心に、教育学において、従来、哲学的コミュニケーション論がどのように応用・受容されできたのか、その全体像を明らかにした。さらに、哲学的コミュニケーション論に加えて、コーチング理論、ファシリテーション論など、いわゆるコミュニケーションの技術論が持つ可能性と限界も明らかにした。これらの理論的研究については、本年度、18回におよぶ研究会を主催し、研究会での毎回の口頭発表を通して討議を重ねてきた。その際、特に、高等教育における倫理学的・哲学的コミュニケーションの前提として、ポストモダンにおける教育現場における教師と生徒の関係性分析の視点を、ジャック・デリダによるマルティン・ハイデガーの大学教育論批判から明らかにすることができた点は本研究の大きな成果である。 実践面では、「倫理学・哲学の授業をコミュニケーション論に基づいた形式で再構築する」という目的を、「哲学カフェ」および「教育カフェ」という形で具体化し、実施した。「哲学カフェ」「教育カフェ」は、中高生および大学生、一般市民に開かれた形で、彼らとの実際のコミュニケーションの中で倫理学・哲学の専門的教育を授業という形で行う試みであっ々。また、つくば市立吾妻中学校で、コミュニケーション論の形式に基づく哲学の授業を二時間にわたって実施させていただいた。これら「カフェ」形式で高等教育における授業を構築することはコミュニケーション論の応用の試みとして非常に有用である。 次年度はこれらの実践を続けながら、倫理学・哲学の授業をコミュニケーション論的に反省・構築する理論体系を提示したいと考えている。
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