2011 Fiscal Year Annual Research Report
〈問いと答えの弁証法〉に関する実践的原理的検討-ガダマー思想の新解釈
Project/Area Number |
22520024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
家高 洋 大阪大学, 文学研究科, 招聘研究員 (70456937)
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 対話手法 / 解釈学 / コミュニケーション論 / 言語論 / 社会科学論 / ガダマー |
Research Abstract |
本研究の当該年度における研究成果は主に以下の三点である。 第1の成果は調査とインタビューである。調査は、5つの哲学カフェ(すべて異なる会場)に参加し、その議論の展開を観察するだけでなく、調査者自身が発言して場の変化を経験したことである。この調査から対話のダイナミクスの基本構造に関する着想を得た。インタビューについては、大阪大学臨床哲学研究室の中岡教授や本間准教授、さらにこの研究室の修了生3名に行った。各人の哲学的対話(特に哲学カフェ)や哲学に関するヴィジョンの違いが明らかになったことが成果である。他方、哲学カフェから参加者が得る事柄(他者の意見を聴きながら考え、発言すること)に関しては、概ね一致していた。 第2の成果は、ガダマーの哲学的解釈学、特にその言語論の位置づけである。『真理と方法』第3部の言語論は、ガダマー自身後年に「スケッチ」と述べていたために、不完全なものとみなされることが多かった。しかし、哲学的解釈学にとっては、逆に言語について詳細に規定しすぎないことが重要であり、このような議論に基づいて、具体的な出来事や芸術等に即した哲学的な解明を行うことができるのである。ガダマーの言語論に関しては、現在、研究が増えてきているが、しかし、このような観点からの見直しは本研究独自の成果である。 第3の成果は、哲学的解釈学の立場からの社会科学の基礎についての研究である。具体的には、インタビュー法の正当性と、行為的な出来事に関する研究(特に看護研究)の独自性の解明が行われた。インタビュー法については、社会構成主義的な立場をガダマーの言語論から基礎付けた。行為に関しては、ガダマーのアリストテレス解釈に基づき、偶有的な出来事としてのケース・スタディに関する知の研究的教育的意義を明らかにした(この内容は、24年度に医学書院の『看護研究』に6回連載される予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガダマーの文献的な研究と、哲学的解釈学による社会科学の基礎の考察に関しては、当初の計画よりも進んでいる(特に後者に関しては、23年度に一定の見解に到達した)。他方、哲学的対話等の対話的コミュニケーションの調査については、やや遅れている。文献研究にかなりの時間を取ったため調査回数が減ったことが、その主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
対話的コミュニケーションに関する調査の分析が、今年度の中心的な研究テーマである。ガダマー研究に関しては、その成果を論文だけではなく、学会発表で公にする。社会科学の基礎に関する研究は、医学書院の『看護研究』に「質的看護研究の前提と主題」というタイトルで6回連載することが決定した(2012年6月号から)。 さらに、年度末に報告書を作成し、その要約を、大阪大学文学部臨床哲学研究室のホームページに掲載する予定である。
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Research Products
(4 results)