2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代の文様、雲気文などがもつ復活再生観念の研究
Project/Area Number |
22520047
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大形 徹 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60152063)
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Keywords | 雲気文 / 復活再生観念 / パルメット / 鹿の角 / 中国古代 / 馬王堆 / 龍 / パジリク |
Research Abstract |
「生命力をもつ文様の伝播-エジプトのパルメット、中央アジアの鹿角文様と中国の龍、雲気文との関係について-」をあらわした。そこでは神仙思想において最重要視される仙薬、芝(霊芝)が本来、きのこではなく、パルメット文様と同様の形をしていることから説き起こしている。パルメット文様はエジプトの睡蓮が文様化されたものである。睡蓮は睡眠する蓮の意味である。その花は夜に眠るかのように花びらを閉じて水にもぐり、翌朝、また水から顔を出し花を開かせる。そのことは太陽と連動しており、沈んだ太陽がまた昇ることと重ねあわされ、復活再生の象徴とされた。エジプトで睡蓮の花束がミイラに捧げられたのは、その復活再生の力を付与できると考えられたからであろう。このパルメット文様が中央アジアのバジリクではシカ(オオツノジカやヘラジカ)の角の文様と組み合わされる。シカの角は毎年、落ちるが、また生え変わる。その特性がやはり復活再生観念とみなされた。墓葬の中でシカの角の意匠はさまざまに使用されている。象徴的なのはアルタイのスフィンクスと呼ばれるものであろう。これは頭にシカの角をつけているが、その一部がパルメットとなっている。つまり、シカとパルメットという二種の文様が習合し、複合化しているのである。この文様の複合化は同一画面の中で文様の象徴的効果を倍にすることができる方法であった。このシカの角とパルメット文様の複合化したものが、中国に入り、さらに竜と結びつき、雲気文と呼ばれたのであろう。竜は本来、魂を天界に運ぶものとされていた。つまり、魂を天界で再生復活させるのであろう。神仙思想の中でも竜が仙人を背中に乗せ天に昇る話が多出する。シカの角とパルメット文様の複合化したものは、空を飛ぶ竜と組み合わされたため、雲気とみなされたのだろうが、本来は生命力をもつ文様の複合による強力化とみなすことができるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
馬王堆漢墓出土の染織品や帛画などにみえる雲気文などを検討し、それがパジリクのスフィンクスの角の文様に酷似していることを確認した。これまで、そのことは全く指摘されていなかった。そのため、本来、シカの角にもとづく文様が雲気文などと呼ばれていた。けれども、中国の文様に中央アジア由来のシカの角にもとづく文様やエジプトのパルメットが確認されたことにより、なぜ、文様が伝播していくのかという理由がわかる。文様が復活再生という生命力を内包していることにより、強力に伝播していくのだと思われる。研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
このような生命力をもった図像が、生者の持ち物だけでなく、死者の埋葬に関わるさまざまな物にも描かれているという資料をできるかぎり集めたい。また後世、雲気文は「雲」と認識されたため、雲としての様式化が進んでい。最終年度では、そのような雲気文の実際の形について、できるだけ多くの図像を集め、それらを詳細に比較してみたい。明清あるいは現代の雲気文は明らかに戦国・漢代のものとは異なっている。戦国・漢代のものは、きわめて細長く枝状であるが木の枝とは言い難い。また、幾何学文様というには複雑すぎる曲線で構成されていた。それが明清のものでは、柔らかい曲線で構成され、丸い形に造形されている。ただ、その際も竜と組み合わされることが多い。
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Research Products
(2 results)