2011 Fiscal Year Annual Research Report
大韓帝国における国家学・反国家思想の受容に関する研究
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22520070
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
権 純哲 埼玉大学, 教養学部, 教授 (80253178)
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Keywords | 近代学術・近代学問 / 国家学 / 反国家思想 / 翻訳 |
Research Abstract |
近代的国家体制構築のさなか、侵略を露骨化しつつある日本との友好関係の維持に腐心していた大韓帝国に受容される近代学問と思想が如何なる役割を果たしたか、という問題意識のもと、とくに国家学・反国家思想の受容実態を、近代学術の伝授と受容の観点から究明しようとする本研究において、まず、その実態を究明すべく、「国家学」関係書籍の調査分析をおこなった。 「国家学」関係書籍は現在、稀少本になっているゆえ、購入や複写できなかったものは、国会図書館近代デジタルライブラリ、韓国国立中央図書館公開の電子ブックなどを活用し、大韓帝国期に出版された「国家学」関係書籍の原書あるいは主な参考書が当時日本の書籍であったことの実態を、新たに明らかにすることができた。そのなか、確認できた日本の学校「講義録」や日本で出版された漢訳書の存在は、近代学術受容に際して韓国からの日本留学生が果たした役割はもちろん、韓国だけでなく清国に対する近代学術の伝播発信基地として大日本帝国の存在とその役割を浮き彫りにするものであった。このほか、大韓帝国の官僚や知識人は、立憲君主制を築き上げ強国になった大日本帝国を学ぶべき見本と考えていたこと、関係書籍の出版が保護条約以後に集中していた点、訳述者に日本留学の経験のない普成専門学校第一回卒業生が複数あったこと、原書と対照して用語の混乱が散見される点などが明らかになった。これらの特徴に留意し、今後の作業を進めていく必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学術・思想の伝播・受容実態を究明するためには、まず、大韓帝国期に出版された「国家学」関係書籍の原書(あるいは主な参考書)の調査確認をする必要があり、利用可能な国会図書館近代デジタルライブラリでの資料蒐集に相当な時間を費やした。それゆえ「国家学」関係書籍の原書・主な参考書として新たに確認できた日本の書籍との内容を対照検討する作業は相当終えたものの、教育制度や関係人物に対する先行研究の整理に基づく補完作業を十分におこなえず、新聞雑誌の関係記事の調査分析には入ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
反国家思想受容の例として、卞栄晩訳述『(二十世紀之大惨劇)帝国主義』および同『世界三怪物』を取りあげ、近代国家思想に対する批判的理解の実態を検証する。そして「国家学」関係書籍に対する検討結果と併せて、「国家学」・反国家思想に関する書籍の調査分析の一定程度の完成を目指す。その後、可能な限り、教育制度や関係人物に対する先行研究の整理に基づく補完作業や、新聞雑誌の関係記事の調査に取り組んでいく。
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Research Products
(1 results)