2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
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Keywords | 思想史 / 漢学 / 懐徳堂 / 並河寒泉 / 陵墓 |
Research Abstract |
本研究は、懐徳堂最後の教授であった並河寒泉の日記・詩文・陵墓調査報告書など従来あまり活用されてこなかった資料を用いて、幕末・維新期の懐徳堂の実態を学問・思想の面から明らかにすることを目的とする。 22年度は、天理図書館に所蔵される寒泉の日記『居諸録』57冊の内、本研究に必要な部分(首巻・天保3年~明治3年)の複写を入手し、情報の抽出に着手した。抽出する情報は、I学生(名前・身分・入退学時期・謝礼など)、II講学(懐徳堂や出講先での受講者<人数>・講義内容<書名・篇名>・期間など)、III学術交流(相手・内容)、IVその他(時事への所感・論評など)である。判読の難しい文字や寒泉との関係が不明な人名などがあり、やはり羽倉敬尚氏の頭注のある京都大学附属図書館所蔵の副本26冊との確認作業が不可欠である。抽出作業は23年度にかけて行う予定である。 上記の作業と並行して寒泉の陵墓調査に関する研究を進めた。寒泉の陵墓調査関係資料は天理大学附属図書館と宮内庁書陵部に所蔵されている。研究の基礎としてこれらの資料の調査を行い、それらの書誌学的な情報および読解した記載内容を解題の形式で整理し、2篇の報告書として公表した。寒泉の陵墓調査に関しては、上記の資料とは別に、寒泉日記『居諸録』に陵墓調査に関する記事が散見し、国学者との共同調査や資料の相互貸与などの学術交流も含む陵墓調査の実態が明らかとなり、また幕末の修陵に関係する資料の調査から懐徳堂の関与が中央に相応の評価をともなって認識されていたことも知ることができた。 幕末の陵墓調査・修理は、朝幕関係および尊皇攘夷思想と関係する政治的思想的な意味合いの濃い事業である。文久の修陵に結実する事業の大きな流れに、懐徳堂・並河寒泉の果たした役割や政治的・思想的な立場・傾向を位置づけることが可能な状況である。この成果は可能なかぎり23年度中に公表したい。
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