2011 Fiscal Year Annual Research Report
マニエリスムの「時代の眼」:ジュリオ・カミッロの美術論の再構成に基づく
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22520089
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
足達 薫 弘前大学, 人文学部, 教授 (60312518)
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Keywords | ジュリオ・カミッロ / エラスムス / フランチェスコ・ベルニ / 記憶術 / ルネサンス / 古典主義 / 美術史 / イタリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、ジュリオ・カミッロの美術論の再構成、およびそれに基づくマニエリスム様式の実証的検証である。本年度は以下の研究・調査を行った。 (1)テクストの翻訳と註釈 16世紀に編纂された『ジュリオ・カミッロ全集』(当時のトスカナ語で書かれている。研究代表者は1566年版を所有している)を底本として用い、各テクストの翻訳と註釈を進めた。 (2)翻訳と註釈のための資料調査 ローマ(国立中央図書館「ヴィットリオ・エマヌエレ二世」等)で関連する文献資料の調査を行った。 (3)カミッロの同時代の古典主義とそれへの批判について、エラスムス『キケロ派』およびフランチェスコ・ベルニのテクスト『反詩人対話』(1525年頃)の翻訳と註釈を通じて研究を行った。 (4)カミッロと同時代のイタリアにおける記憶術的実践の例として、ブロンツィーノによるエレオノーラ・ディ・トレド礼拝堂(フィレンツェ、パラッツォ・ヴェッキオ)の考察を行い、以下の論文として発表した。 遠山公一責任編集、喜多村明里、松浦弘明、足達薫、金井直、越川倫明著『祭壇画の解体学-サッセッタからティントレットへ(イメージの探検学II)』ありな書房、2011年4月1日。共著。執筆箇所181-228(第4章『ブロンツィーノ《キリストの哀悼》-「エレオノーラ・ディ・トレド礼拝堂」における絵画と彫刻の対話」) (5)研究成果の途中経過を2012年の以下のシンポジウムで発表する予定となった。 6月30日(土)、東京大学本郷キャンパス「アビ・ヴァールブルクの宇宙シンポジウム『ムネモシュネ・アトラス』をめぐって」 パネリスト伊藤博明、加藤哲弘、田中純 コメンテーター上村清雄、木村三郎、三中信宏、足達薫
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ジュリオ・カミッロとそのテクストの読解から出発し、同時代のローマにおける古典主義の実践と理念、およびそれに対する反発的批判(エラスムス、ベルニ)まで調査範囲を広げ、具体的な文化史的コンテクストを捉えることができた。当初はカミッロのみの研究であったが、カミッロとその時代の美術論をさらに包括的・具体的に研究するもっと大きな調査としてまとまりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度からは、1500年代初期のローマにおける古典主義の実践と理念を再構成するため、以下の3つの美術的・文化的事象の資料調査・読解・註釈と翻訳を進める。 (1)1513年のカンピドリオの丘での古典劇の上演とその内容(記述資料が残されている) (2)サンタゴスティーノ聖堂(ローマ)に現存するアンドレア・サンソヴィーノの彫像《聖母子と聖アンナ》と、それをめぐる詩人たちの古典主義的祝祭「コリュキアーナ」の調査。詩人たちの詩の調査を進める。 (3)ヤコポ・サンナザーロの古典主義的宗教詩『マリアの出産』の翻訳と註釈。
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Research Products
(1 results)