2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520111
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
田中 正之 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (70290872)
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Keywords | 美術史 / 美学 / 芸術諸学 / 博物館学 |
Research Abstract |
本研究は、モダンアートの展示空間の歴史的調査を行い、とりわけ所謂ホワイトキューブ的展示空間とは異なる、そのオルターナティヴともいえる展示空間の意義を再評価し、ホワイトキューブとは異なる展示空間の在り方、そしてそれによってうみだされる作品の意味について考察することを目的としている。本年度は、ヨーロッパとアメリカ合衆国での調査旅行を行った。ヨーロッパでは、非ホワイトキューブ的展示空間の典型的な展示室ともいえる、エル・リシツキーによってデザインされた「抽象の部屋」(ドイツ、ハノーファー、シュプレンゲル美術館)を調査した。シュプレンゲル美術館に再構築された展示室を実見し、また同館に保管されているリシツキーによる準備段階の素描を特別に閲覧させてもらい、彼のオリジナル段階での構想の分析を進めた。アメリカ合衆国においては、今年度は建築家フィリップ・ジョンソンに関する調査を中心に行った。ニューヨーク近代美術館は、ホワイトキューブ的展示空間の典型的美術館として、かつまたそれを世界的規模にまで広めた美術館として知られるが、その展示空間のデザインに深く関わったのがジョンソンであった。しかし彼はまた、晩年に、自身の美術コレクションを保管・展示する建築物である絵画ギャラリーと彫刻ギャラリーをコネティカット州ニューケイナンにある自邸グラス・ハウスの敷地内に建てており、それらは非ホワイトキューブ的な独特なコンセプトを有している。今回の調査では、それらの建築を実見するとともに、文献資料および映像資料を収集し、現在はそれらの整理・分析を進めている。
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