2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520111
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
田中 正之 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (70290872)
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Keywords | 美術史 / 美学 / 芸術諸学 / 博物館学 |
Research Abstract |
本研究は、モダンアートの展示空間の歴史的調査を行い、とりわけ所謂ホワイトキューブ的展示空間とは異なる、そのオルターナティヴともいえる展示空間の意義を再評価し、ホワイトキューブとは異なる展示空間の在り方、そしてそれによってうみだされる作品の意味について考察することを目的としている。本年度は、ヨーロッパでの調査旅行を行うとともに主に文献による調査を進めた。また、これまで視野に入っていなかった新たな対象の重要性を見出すとともにその調査を進めた。具体的には、前年度に引き続きエル・リシツキーの「抽象の部屋」の調査を進めたが、今年度はこの展示室とオランダのデ・スティルの関係を探ることを行った(「抽象の部屋」で展示された代表的な作品はモンドリアンの作品であった)。そのためオランダのアムステルダム近代美術館やユトレヒトのシュローダー邸、およびアムステルダム派の諸建築への調査を行い、デ・スティル的な空間構成や展示空間構成の分析を進めた。またフランスのストラスブールにあるデ・スティル的空間構成の代表作でもある「ローベット」の調査を行った。オランダではまた、リシツキー作品の膨大なコレクションを持つとともに、「抽象の部屋」との関連が非常に重要である「プロウン・ルーム」の再構築を有しているファンアッベ美術館(アイントホーフェン)での調査を行った。ヴェネツィア・ビエンナーレ等にて現在の美術の非ホワイトキューブ的空間における作品展示を考える中で、万国博覧会における美術作品の展示を新たなに考察の対象に加えるべきと考えるにいたった。そのため、1937年パリ万博をケーススタディとして、航空館におけるロベール・ドローネー、電気館におけるラウル・デュフィ、スペイン館におけるピカソやミロの作品展示への調査を、おもに同時代の雑誌記事をもとに行った。とりわけこの博覧会に出品されたことで有名なピカソ《ゲルニカ》に関しては、スペイン館という空間の中でその作品がどのような意味を生み出しかを考察し、その成果は講演会にて口頭で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカでの調査計画に関しては当初の計画から変更をし、今年度よりも平成24年度に集中的に行うこととしたが、その分ヨーロッパに関して十分な調査を行うことができた。当初予定したリシツキーの「抽象の部屋」などの対象に関しての調査は順調に進んでおり、また新たなに考察対象となった部分に関しての調査・分析も順調に進んでいる。平成24年度に調査結果の整理と総括を行うにあたって支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初平成22年度に予定していたアメリカ合衆国西海岸にあるゲッティ・センターでの調査は平成24年度に行う。また当初は調査予定にはなかったアメリカ合衆国東海岸マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学附属ブッシュライジンガー美術館での調査も行い、あわせてニューヨークでの調査を行う。アメリカでの作品展示空間の問題に関しては、さらにニューヨーク近代美術館の初期活動の時期にあたる1930年代に焦点を合わせて、モダニズムとアンチ・モダニズム的な展示の問題も視野に入れて考察し、公表する予定である。これまで調査を進めてきたリシツキーを中心とした展示空間に関しても分析を進め、同じく論文公表を行う。
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