2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520127
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
江藤 光紀 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (10348451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城多 努 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (30423966)
辻 英史 法政大学, 人間環境学部, 講師 (80422369)
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Keywords | 歌劇場 / 文化政策 / 公共政策 / ドイツ / オペラ |
Research Abstract |
昨年度は7月、9月、10月と定期的に研究報告会を開いていたものの、科研採択決定が10月末に伝わっため、実際の調査を前提とした議論は年の瀬へとずれ込んだ。スケジュールを調整して計画を練り直し、まずはドイツ全土の歌劇場に関する統計資料を入手して、それをもとに調査要旨と質問事項を策定。対象として絞りこんだ幾つかの機関に事前に送付した。その上で3月の後半に江藤・城多の二人が統計資料の制作元であるケルンのドイツ舞台協会、さらにフランスとの国境に沿ってザールラント州立劇場、バーデン州立劇場、フライブルク市立劇場と南下して、最後にスイスのドイツ語圏の劇場であるチューリヒ歌劇場を回り、可能な関係者にインタヴューを行って質問に対する回答を得るとともに必要な資料提供を受けた。 持ち帰った資料や情報はこれから詳細に分析するが、概略として言えるのは東西統一後、ドイツの歌劇場は過剰な人員をどう削減するかという課題に悩まされ続けてきたということである。削減は長期に渡り続いたが、ここ数年でようやく好転の兆しが見えてきた。幸いなことに歌劇場自体の閉鎖という最悪の事態に至ったケースは多くはないが、歌劇場をめぐる財政事情は依然として全国的に厳しい状況に置かれており、毎年のように各地で新たな問題が起こっている。 だが個々の劇場の抱える問題は、州立・市立の別、規模、土地柄などによって実に多様である。今回調査した地域に関しては、所属の地方公共団体から複数年にわたる予算枠を獲得して財政基盤の安定を得る一方、若者向けのプログラムを充実させ鑑賞者を育てる、先鋭的なプログラミングによってジャーナリズムの興味を引く、地域の大学と連携した文化公演を充実させる、などのさまざまな取り組みがみられた。また国境に近いこともあって、行政区域にとらわれない近隣地域連合へと踏み出す試みなども模索されている。今回は規模的に似たような劇場を選択したが、次年度以降はより大きな歌劇場や財政面で逼迫した劇場など、奥行きのある調査になるように対象を選択したい。
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Research Products
(7 results)