2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520153
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
藤本 由香里 明治大学, 国際日本学部, 准教授 (50515939)
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Keywords | 大衆芸術 / マンガ / 国際市場 / 流通形態 |
Research Abstract |
23年度は東日本大震災やタイの洪水など不測の事態のため、予定していた調査がいくつか流れてしまい次年度に繰り越しにせざるをえなかったが、その中で、4月後半に中国の蘇州・杭州に調査を行い、3月にはベトナムのホーチミンとハノイの両方で調査を行い、期待していた以上の成果を得ることができた。 まず、蘇州での調査では、上海ではほとんど見ることができなかった古い形式の「連環画」が蘇州の書店では普通に売られていることが確認できた。また、日本のエッセイマンガが、中国政府のマンガ輸入規制をかいくぐる形で出版され、人気を得ていることを発見したのも大きな収穫だった。蘇州大学での学生の意識調査では、学生の「貸本」の利用率がかなり高いことを確認することができた。杭州の動漫節では「動漫節」と銘打たれていても、このフェアが基本的に「アニメフェア」であることが確認でき、中国においてアニメがマンガよりはるかに優先されていること、中国のアニメ産業・アニメ産業基地の実際、携帯電話をつかっての「動漫配信」の展望、などについても多くのことを知ることができた。 一方、ベトナムの調査では、JETRO、テレビ局と連携したマンガ出版社TVM、老舗のマンガ出版社TRE、海賊版でも知られる出版社、ドラえもんを最初に出したことで知られる国営の児童書出版社のキムドン、各種の書店、日本マンガの影響を受けたベトナムのローカル漫画でヒットを飛ばしたファンティ社、ベトナムローカルの人気漫画家、最も大きい出版取次であるFAHASA、貸本屋、マンガ喫茶、ファンコミュニティの中心にいる若い人……など、考えられる限りすべての側面から多面的な取材をすることができた。とりわけキムドン社では歴史的な経緯について詳しい証言を得ることができた。その結果見えてきたのは、ベトナムではまだ露店でマンガが売られることが多く、組織的な流通が確立していないことが、マンガの売れ行きの頭打ちにつながっているらしいことである。また、ベトナムでは日本マンガが入る前、ローカルなストーリーマンガはなかったと言われていたが、じつは南ベトナムでは、おそらくアメコミの影響を受けたレベルの高いマンガの萌芽があったことが確認できた。これもかなり画期的な発見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査に行った国や地域に関しては、思っていた以上の成果を得ることができた。ただ、震災やタイの洪水によって予定していたけれど先延ばしにせざるを得なかった調査もある。また、調査の結果は大学の講義や新聞・一般の雑誌などでは発表しているものの、あまりに調べた国、調査の成果が多いこともあって、学術的な場での発表がなかなかできていない。しかし、調査自体については、時間や予算の限界があるなかで、期待される以上の成果を得られたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は最終年度になるので、予算は超過しても時間が許す限り、海外調査を行っていく予定である。夏にタイ・マレーシア(可能なら台湾)の調査が行えれば、アジアに関しては概況がわかってくる。ヨーロッパはさすがに時間と予算の限界があり、イタリアの調査はあきらめざるを得ないと思うが、フランスとスペインの調査が今年行えれば、だいぶ立体的になってくると思う。アジアにおける学習漫画の重要さも浮かび上がってきたので、秋には韓国の学習漫画についての追加調査も行いたい。今年は学術誌への投稿も考えており、調査が終わってから、おそらく2013年度になると思うが、調査の結果を一般単行本として出版したいと考えている。
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Research Products
(1 results)