2010 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間の大阪と上海における西洋音楽受容の比較研究
Project/Area Number |
22520161
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Research Institution | Osaka College of Music |
Principal Investigator |
井口 淳子 大阪音楽大学, 大阪音楽大学音楽学部, 教授 (50298783)
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Keywords | 上海租界 / 大阪 / 洋楽受容 / 亡命ロシア人 / 上海交響楽団 / 音楽学校 / 両大戦間 / ライシャム劇場 |
Research Abstract |
2010年の研究成果は、二つの地域(上海、大阪)にまたがるものであった。まず、「上海租界の洋楽受容」についての現地調査(9月1日から10日にかけて実施)においては、関係する中国人研究者への聞きとり調査と資料調査を実施した。特筆すべき成果としては、上海交響楽団の本拠地にある楽団資料室で、一次資料の複写が許可され、1930、40年代の写真、プログラム、手書き資料などを収集することができた(複写や画像撮影)。聞きとり調査においては上海の音楽界における亡命ロシア人、ユダヤ系難民がはたした役割について、第一人者である研究者たちと今後の共同研究の可能性について協議することができた。日本側が所持する一次資料(1940年代)に対する関心は高く、相互に協力しあえる領域があることを確認した。また、実際に現地で確認できた事実として、交響楽団、音楽学校、ライシャム劇場(楽団の定期演奏の場)という3カ所が近距離にあり、相互に密接に関係しあっていたことに気づくことにもなった。 一方、大阪の洋楽受容については、大阪音楽大学所蔵の資料群を用いて両大戦間の演奏会プログラムおよび学史資料を解読することに重点を置いた。演奏会活動において上海と同様に亡命ロシア人がはたした役割と功績の大きさを確認するにいたった。 上海と大阪の洋楽受容は、ともに両大戦間において亡命ロシア人によって演奏、教育両面が牽引されていたという共通の事実がある。一方で相違点もみとめられる。上海ではロシア人は国立音楽専科学校などで正式な教授職を得るなど積極的に教育の場で登用され、活躍していたのに比して、大阪ではそのような事実が一切ない。このような両都市の洋楽受容上の差異についても次年度では詳細に調査を継続していく予定である。
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Research Products
(3 results)