2010 Fiscal Year Annual Research Report
越劇作品におけるジェンダー意識とその現代的意義--日中比較に見る女性演劇の可能性
Project/Area Number |
22520163
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
中山 文 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30217939)
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Keywords | 越劇 / ジェンダー / 女性演劇 / 日中比較 |
Research Abstract |
今年度は日中における女性演劇の現状を知ること、日中女性演劇人の交流の基礎を築くことを研究の目的とした。 (1) 現代日本演劇における女性演劇人の活躍について調査し、サッカリンというチームの活動に注目した。サッカリンは関西の女性劇作家5人が俳優活動を行うために結成され、ドーンセンター(大阪府立男女共同参画・青少年センター)が行った第16回女性芸術劇場で、11年2月に第二回の上演を行った。5人が戯曲『その鉄塔に男たちはいるという』を『その鉄塔に女たちはいるという』という作品にリライトし、自分たちで演じる。同時に5人がそれぞれ原作からインスパイアされた書きおろした短編戯曲『そのどこかに男たちはいたという』を書き、男性俳優で演じるという試みである。逃亡兵士を女性が演じるときに生じる違和感、原作から呼び起こされるイメージの広がりかたにジェンダー的特徴を感じさせた。同じテーマの作品が作家の性別によってまったく異なった局面を見せることに気付かせられた。 (2) (1)の時期に合わせて上海の若手女性劇作家を招き、「第一回女性演劇人会議」を開催した。サッカリン作品の観劇、サッカリンメンバーとの交流、2度の講演会(「上海の演劇ど私の作品」「中国女性作家の創作から中国女性演劇の可能性を考える」)を行った。この交流活動を通して、日本女性演劇の中国上演が現実化した。今後は作家や研究者だけではなく、演出家、プロデューサー、劇場経営者を含んだ広い範囲での女性演劇人の交流の可能性が見えた。 (3) 新越劇の状況調査。8月杭州で新編昆曲『班昭』の越劇版が発表された。父・兄の事業『漢書』を継承し完成させたにも関わらず、女性ゆえに自分の名前を残せなかった班昭の物語が、昆劇から越劇にリメイクされることにより、どのような差が生まれてくるかを実見した。いずれも同じ演出家による演出であるが、越劇では昆曲作品よりも、普遍的な女性像を感じさせた。
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Research Products
(7 results)