2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520182
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
久保田 啓一 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80186452)
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Keywords | 近世 / 堂上派 / 和歌 / 宗匠 / 門人 |
Research Abstract |
本研究の基礎固めとして、まず冷泉家から日野家へと歌道宗匠を替えた大和郡山柳沢家の代々の資料調査を中心に置き、さらに冷泉家に対抗して積極的な門人獲得戦略を展開した日野資枝に関する資料の収集に努めた。 特に資枝が伝授した歌学書に、門弟である柳沢家当主に対し、資枝が如何に当代の宮廷歌壇において重要な位置を占めているか、他の宗匠家が如何に停滞しているかを強調する文言が見られ、資枝が意識的に自らの存在を大きく打ち出そうとする姿勢を有していたことが明らかとなった点は重要であり、同じような資料を所蔵する出羽庄内藩酒井家などとの比較検討を通して早急に概略をまとめる必要がある。 次に、大田南畝編「ひともと草」の注釈は、冷泉家と日野家の武家門人が混在した寛政期の江戸の和文壇を概観する上でも意味があり、江戸冷泉派の重鎮である成島信遍の伝記研究は、日野家が江戸に本格的に進出する前の江戸文壇の状況を鳥瞰的に把握するための基礎作業として欠かせない。この2点を本年度の研究成果として公表した。 なお、近世中期の宮廷の状況を大観するための「天皇皇族実録」、冷泉・日野両家の門人獲得競争の主要な舞台となった江戸の幕臣層を見定めるための「江戸幕府役職武鑑編年集成」は、ともに本研究の基盤を成す公刊資料であり、今年度に限らず有効に活用できるものである。
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Research Products
(2 results)