2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520190
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
白井 伊津子 淑徳大学, 総合福祉学部, 准教授 (40323224)
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Keywords | 萬葉集 / 修辞 / 譬喩 / 懸詞 / 古今和歌集 |
Research Abstract |
中国古典文学における譬喩表現と日本古典文学の譬喩表現を比較検討し、中国文学の受容のあり方、および日本古典文学における譬喩表現の独自性を明らかにすべく、前年度に引き続き、平成23年度も「譬喩表現比較の基礎資料」作成のために、作品の分析を行っている。本年度は、『古今和歌集』の恋部の歌、『懐風藻』の詩作品について、譬喩を構成する所喩と能喩の関係を、形式的特徴、譬喩の素材的特徴の観点から分析を加え、一首ごとにデータの蓄積をはかった。さらに、中国文学の方面から、『文選』『玉台新詠』の詩作品の主要なものについても検討を加えた。 同時に、本資料の作成の過程において、譬喩表現が、懸詞に縁語をともなう修辞表現とも密接な関係を有するのみならず、見立ての技法にも展開していく実際が、『萬葉集』から『古今和歌集』の懸詞の通時的な分析を踏まえて明らかなったことは、とりわけ有意義であった。 すなわち、譬喩表現の基盤となる、景物の事象と人事の関係は、『萬葉集』においては、主として序歌が担っていた。序歌のばあい、序詞と本旨とは同一の文脈をなすものだが、『古今和歌集』では、ふたつの文脈を築く懸詞と縁語においても、景物の事象と人事とが譬喩関係をもつ。それは、音と意味ということばの両面を反省的に捉え、同音の形式に景物の事象と人事のふたつの意味を隣接させうるものとして、懸詞一異なるふたつの文脈を導く機能-を方法的に捉えなおした結果だと考えられる。つまり、こうした懸詞の方法こそ、日本古典和歌の譬喩表現における独自性として認めることができるという結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎資料の作成については、解釈の複雑な例に手間取り、文献によって進捗状況にばらつきがあるが、平成24年度末の完成を目指しているため、鋭意整備していきたい。譬喩表現の実態の考察については、資料作成のための作品分析の過程において、わが国の通時的な展開を踏まえた成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度となるため、基礎資料の完成を目指すべく整理を進めると同時に、中国文学の譬喩表現との比較という点から考察を深めたいと考える。
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